2008年8月16日土曜日

精神保健福祉士スクーリング(1日目)精神保健福祉援助各論

ケアマネジメントの手法を概観しながら、PSWとしてクライアントに対する姿勢について、以下の内容を、豊富な事例で説明する講義だった。

講義を受けて考えたことは以下の通り。
■「ストレングス strength」について。「強さ」と訳させることが多く、クライアントの「できること」を指して使うことが多いようだが、テキストを読み、本日の講義を受けながら考えたところ、「興味あることについて、自らを変化させることのできる力」のようなイメージが浮かんだ。もちろん、その人の「長所」とする見方もできるだろうが、もう少し範囲が広いのかと思う。
■視点を変えるためには、支援者自らが様々な経験を積み、多彩な発想で物事を考えプランニングする必要がある。たとえ、それが選択されないプランであったとしても、考え、説明するのが望ましい。
■「真のニーズ把握」にこだわるべきとのこと。このことはPSWに限らず、カウンセラーの仕事にも直結する。フォローアップ研修の時から考えているように、Iyokiyehaの仕事にひきつけて考えると、ニーズは常に2つ以上の方向(多くは、本人と事業所)から発せられているのであり、そのいずれもないがしろにはできず、どちらかに偏った場合にはもう一方の側の信頼を損ねる。
■「伝える」ことにこだわる姿勢も、Iyokiyehaが普段こだわっていることと、共通していた。ただし、伝える「内容」だけでなく、伝える「時」がとても大切ということを知った。「伝えようとしているかどうか」を自己確認するとともに、「伝わっているか」を常に確認しながら相談や計画策定を進めるべき。
■ソーシャルワーカーは、いわば「夢を与える」存在。自らが夢を持ち、かつクライアントの夢を描き、クライアントが大きな夢に向かうことのできるよう、小さな「見える」夢をたくさん見せることが、クライアントのストレングスを活かすことになる。
■「治るんでしょうか?」と不安気に聞いてくる患者や家族に対し、「治ると信じています」と言い切る前向きさも必要か。


<講義内容概要>
1.ケアマネジメントの前提となる考え方
 ①世の中、全てのもの(本人を含む)は「社会資源」である
 ②「上手に生きる」とは、「資源の使い方が上手い」こと
 ③ケアマネジメントは、人と社会資源をつなぐ活動
 ④全ての人は、自分なりにケアマネジメントしている
-精神保健福祉士(以下、PSW)は、たとえクライアントの代弁者となっても、言いなりになってはいけない。
-相手を見ながら、対応を変えていく
-(講師私見)生理学、社会学、医学、心理学的なアプローチを学ぶことは、PSWにとって意味がない。(補足:もっと基本的な「人と人とのやりとり」がある)だから、99%の無駄をやった方がいい

2.PSWとは
(1)PSWの機能(4+1)
 ①援助と支援
 ②連絡・調整
 ③企画・調整
 ④予防活動
 ⑤教育・育成
現場では、とかく①に偏りがち。②~④にもっと取り組むべき
また、スーパーバイズの体制を整えるなどして、⑤はもっと強調されるべき。
(2)ソーシャルワーカーの役割(16項目)
 ①調査者
 ②診断者(ニーズ診断)
 ③望みをかなえる人
 ④ケア提供者
 ⑤社会治療者(社会を治す)
 ⑥支援を動員する人(一人で全てはできない)
 ⑦助言者
 ⑧カウンセラー
 ⑨仲介者
 ⑩インストラクター
 ⑪代弁者(アドボカシー)
 ⑫運営管理者
 ⑬弁護者
 ⑭情報提供者
 ⑮オルガナイザー(主催者)
 ⑯リーダー
どれも当てはまるが、少なくとも「カンファレンスで発言できない人は、ソーシャルワーカーの資格なし」
-退院に長年の調整を有したケース。ようやく実現した退院後、順調に地域生活に移行したかと思っていたが、「何も起こらないこと」に家族が抱いた「不安」を本人が敏感に感じ取ってしまい、自ら命を絶ったケース。

3.クライアントの視点
(1)クライアントに教えられる
 ①ちょっとしたことで安心感を得る(足を回すなど)
 ②ドイツ人の「プライベートスペース」と、説明・許可の必要
 ③ケーキ屋で実習し不採用という結果に対し、「精神障害者って怖くないって言われた」ことを素直に喜べる
 ④食事を取らないクライアントにレクリエーションを提案し「腹減った」
(2)自らの思い込みを捉える
 ①第一印象は数年続くこともある(ルビンの壷と娘と老婆)
 ②人の性格は変わらないが、見方を変えることによってストレスは減る
 ③情報混雑時に、ちょっとしたヒントがあると整理される(James:ダルメシアン)

4.「伝える」こと
(1)丁寧になると言葉が増える
 ①まず大切なのは、「伝達したい情報」が正確に発せられること
 ②結論-理由の順番
 ③さらに、「対象の焦点化」が必要
 ④伝えるべき「時」を逃すと、伝わるものも伝わらない
(2)二重の「感情」
コミュニケーションとは「ずれ」が生じるもの。
AがBにXという情報を伝える時、AはXを「記号」として発するが、そこには必ずAの感情Yが加わる。Aから発せられたXYは、Bに聞こえたときにはZという感情が加わって認識される。もちろん、XYはいずれも完全にBに伝わるわけではないので、変数cが差し引かれる。
よって、Aが伝えようと思っていた「X」をBが認識する場合、Bには(X+Y)-c+Zとなり、伝わらないものも少なくない。
コミュニケーションは知識だけでなく、感性も大切。
冷静に広い視野を保つことと同時に、相手に自分の感情をわかりやすく届けることも、コミュニケーションを充実させる大切なことといえる。

5.まとめ
前提として、人は思い通りにならない。恋人や夫婦であっても、それは同様である。支援を考えるときも同様に、クライアントが支援者の思い通りになると考えない方がいいし、またクライアント自身のニーズに合わず、納得の得られないプランでは、意図した効果はあがらない。
ストレスは、先の結果がわからないことによって「ストレス」になる。将来を見えるようにするのが、ストレスの軽減には有効。
よりよいプランニングのために、必要なことは以下の4点。
(1)視点を変える
(2)伝わっているか、伝えようとしているか
(3)「人」としてクライアントに接するのが基盤となる
(4)「真のニーズ」は何か、常に把握しようとする