2019年8月16日金曜日

戸塚隆将『世界で活躍する日本人エリートのシンプル英語勉強法』ダイヤモンド社、2018年。

・英語(他の言語も同じ)は、意思表示のための記号(シンボル)である。よって、考えていること、思っていることを「人に伝える」「人から伝えられる」ためのもの。

(引用からのまとめ)
11 「シンプルな英語」を身につけるための6ステップ
(1)「ブロークン」でもいいから、とにかく話す。
(2)正しい発音を「まず頭で」理解する。
(3)英文を「前から」解釈しながら読む。
(4)「音読とセットで」ひたすら聴く。
(5)結論と根拠を明確にして「ロジカルに」書く。
(6)かならず「フルセンテンス」で話す。
といった、いわゆるグロービッシュが求められる。要点は「伝え・伝わる」こと。
65 「シンプルな英語」とは?中身が大切である。
(1)結論が明確でわかりやすい。
(2)論理が明確でストレート。
(3)簡単でわかりやすい語彙。
(4)堂々と存在感がある。
(5)高いリスニング力を備えている。
70 語学レベルの5段階
native ネイティブ
fluent 準ネイティブ
business ビジネスレベル(目指すべき水準)
daily conversation 日常会話
basic 初心者
132 あらゆるコミュニケーションにおいて、「誰が/何か」「どうする/どんなだ」ということが、伝えるメッセージの根幹です。
136 (主語が)もし省略されているとすれば「何が省略されているのか」をしっかり把握する。
194 ライティング:冒頭に結論を述べ、それに続いて根拠を明確に述べます。  結論→根拠(1・2・3・・・)→結論のフレーズ
206 質問に答えられないのは、答えがないから

水谷修『増補改訂版 さらば哀しみのドラッグ』高文研、1998年(初版)、2014年(改訂)。

・夜回り先生によるドラッグ(薬物)の入門書。ドラッグの危険を、依存性と脳への影響という軸で評価し、一般書としてまとめている。薬物依存者への対応についても、類型化して整理している。
・専門機関による介入で対応できる可能性があるのか、それとも介入できる可能性は低いのか、あるいは精神科医療の範疇なのか、これらの段階について、著者によるある程度の基準が示されている。
・少なくともこれまでは、そして読了した今でも、薬物は自分が使用する可能性はないもの、である。どこか、自分とは関係ないものとしてとらえているところはある。しかしながら、身近なところにあって、それを乱用している人がいることも事実である。決して、自分とは関係ない世界の出来事ではなく、すぐそばにある危険であることを改めて感じさせられた。
・ドラッグなんてなくなればいいのに。知れば知るほど、怒りしかわいてこない。

(引用からのまとめ)
11 薬物依存から脱するための3つの方法(本頁ほか)
(1)自分の力で覚醒剤を絶つこと。
(2)専門家、専門病院、自助グループの力を借りて、覚醒剤を絶つこと。
(3)このまま使い続けて、警察のお世話になるか、死に至るか。
他に方法はない。しかし、水谷氏であっても(1)で覚醒剤から脱することができた人はいないと断言している。また、(2)で可能性のある「精神病院」への入院、(3)の「警察のお世話」は、「運のいい場合」である。
12
・ドラッグは、頭も心もからだも、がんじがらめに捕らえるもの。頭で乱用を止めようとしても、心がドラッグを欲します。また、心から乱用を止めようとしても、からだがドラッグを欲します。これが本当の怖さ。
・身体だけでなく、頭までこわしていくもの。そして、心もこわして、人との関係を次々と絶っていくものがドラッグである。
・脱法ハーブは人体実験でしかなく、その成果(結果)はだれかをこわすためのもの。

井上章一、森岡正博『男に世界を救えるか』筑摩書房、1995年。

・国際日本文化研究センターの現役論客井上氏と、同センター勤務時代の森岡氏(現在、早稲田大学)が、ジェンダーを切り口に社会と世界、そして自分の内面をえぐりだしていく対談集。
・大まじめに歴史認識や男女関係を整理し新しい視点を加えていくことはもちろん、その背景となる社会構造や、それを引き受けつつ本音と建て前を揺れ動く自らの思考を率直(赤裸々?)に語ることで、(論理的には)エコロジーや愛と権力、脳死移植などへと展開していく。話題は尽きることがない。
・大胆にテーマを展開させる中で、森岡氏のライフワークである「生命学」の萌芽が読みとれる。「矛盾を抱えながらも、よりよく生きるための知恵」を思索し、その整理が進んでいる。
・時々「中学生かよ!」と言いたくなるような自己開示があるなど、(当時)気鋭の学者が本気で対談すると、人の内面がここまで言語化されてしまうということに、思わず吹きだしてしまいそうになる箇所も随所に含まれている。そういう展開ができること、それ自体が同テーマの他の著書にはみられない特徴であるといえる。
・概念形成や言葉の定義にこだわること、それらを深めていくプロセスは、上記「おもしろい」対談といえど、哲学を基礎とした知的創造の営み、あるいは真剣勝負の記録といえるだろう。
・概要:本書は性的な差異から見える現代社会の姿(1、2章)、環境活動から見える言論や(いわゆる)神話の位置づけと役割(3章)、そもそも「環境」とは何か(4章)、そして環境活動や社会変革における「少女」概念の定義とロリ・エコ・フェミの整理(5章)で構成されている。

(以下、引用)
33 頭を占領したフェミニズムは、やがていつか身体も支配してゆきます。 同 「愛」と「やさしさ」につけこみながら、フェミニズムは男の中に侵入してくる
35 自分の本性をコントロールして、いいことがあるんですよ。マゾ気分を楽しめるのです。私はこんなに美人が好きだ。しかし、倫理としては、それを公の場所で実行してはいけない。ああ、この二律背反、このジレンマ。自分の中のこの分裂に耐えて、苦しんで、生きてゆかねばならない・・・。
44 我々が問うべきは、「本質的に値段などつけようのないもの」ではなく、「本質的に値段なんかをつけるべきではないもの」なのです。(中略)値段をつけるべきではないものに、値段をつけてしまうことへの、倫理的反発。これが、売春を本質的に悪と決めつける人たちの、倫理的根拠なのでしょう。
45 資本主義の波にまったをかける反動勢力としての倫理。これが現代の倫理学に期待されているひとつの役割なのです。
52 臓器移植はすでに政治問題化していますからね。(中略)貨幣を介した市場での交換によって人間活動が運営されている現代日本において、セックスや臓器移植という相互行為に対しては、貨幣交換によってではなく、贈与によって運営すべきであるという、倫理のプレッシャーが働く。 同 現代の倫理は我々に、次のようなことを要求しているのでしょう。セックスにおける贈与の見返りは、たとえば具体的な性交渉行為そのものの中(性交に参与しているという満足感)にだけ見出せ。あるいは自分のセックス・アピールの贈与の見返りは、他人の視線がもたらす快楽の中にだけ見出せ。要するにセックスのカテゴリーの外での見返りを期待するな。臓器提供における臓器の贈与の見返りは、臓器を提供するという行為のただ中(たとえば人類愛への奉仕)にだけ見出せ。臓器提供の外に見返りを期待するな。このようなストイックな囲い込みの思想が、タダならよいが金をとると悪いという倫理の基盤になっている可能性があります。
57 金がからむと「道具化」がすすむという話もあります。売春とは、男が自分の快楽の満足のために女性を道具として利用することだし、臓器売買も、自分の生命と健康のために人間の肉体を道具として扱うことである、というわけです。倫理学は伝統的に、人間や生命を「道具」として扱うことに反対してきました。しかし、我々の癒しがたい本性のうちに、人を道具として使うことへの衝動があることもまた事実であるように思います。
76 運動で負けるからこそ、言説面では敗者が光る、っていうメカニズムを、どこかでちゃんと計算にいれているんじゃないか・・・
82 二つの相容れない勢力が戦いをする。このとき、一方が勝ち、他方は負けます。勝った方は、敗者を徐々に征服し追い詰めていく。ただしこのとき、滅びゆく敗者は、死に際に、強烈な怨念のシャワーを発します。このシャワーの毒は、多くの人々に良くない影響を与えるかもしれない。そこで、勝者は現実世界での勝利と引き換えに、敗者に架空世界での勝利を渡す。そうすることで、敗者の怨念が「鎮魂」をとりおこない、戦いを集結させる。
106 「不自然だ」というのは、人間の気持ちの問題、つまりある種の自然プロセスを見たときに人のこころに湧いてくる「気持ち」の問題
118 自然にかえれという魂の衝動が、生命を抹殺せよという方向へと突き詰められてゆく。たぶん、「自然=生命」と考える人たちは、これとは逆に、「自然にかえれ」とは、<いのち>がつぎの<いのち>を連綿と生み続けてゆく、その生命の連鎖への参与のことだ(後略)
130 ナウシカを見てください。彼女は、自分の意志と判断力で行動する、自立した少女です。そして、危機に直面したときには勇敢に戦うことのできる「戦士」です。ナウシカは、性的には未成熟でありながらも、自分の足で自立して立ち、すなおで、勇敢で、かわいらしくって、ほのかなエロスを備えている。 同 そういう「少女」のエロスこそが、我々に宗教的とさえ言える思想のパラダイム・シフトを引き起こすことができうのですから。思想の次元での転回を導くような、少女系エコ=フェミニズムのことを、私は「ロリコン・エコロジカル=フェミニズム」と呼びたいのです。
172 「正義のいやらしさ」や「権力のドロドロ」をも自らのものとして引き受け、そのうえでそこに還元できない「愛」や「倫理」を見失うことのない地平で、それらすべてとの永遠の格闘を――つまり答えのない闘争を――続けるようなものになるはずなのです。(「生命学」)

水谷修『夜回り先生』小学館文庫(Kindle版)、2011年。/水谷修『夜回り先生と夜眠れない子どもたち』小学館文庫(Kindle版)2011年。

・学生の頃に読んだ2冊である。今回は薬物依存に関する勉強をする必要があり、その情報収集がきっかけで読むことになった。
・薬物依存の詳細は次書に譲るとして、本書は古いものでありながら、氏がライフワーク(?)として行っている「夜回り」と、そこで出会った子どもたちに関して書かれている。
・書籍化されているわけだから、もちろんこれがすべてではないだろうし、この内容で「夜回り」の是非が問えるわけもない。ただ、一つだけ言えるのは、水谷氏の「夜回り」によって、救われた人がいるということである。
・当然、救われなかった人もいるわけだが、要は是非で問えないということである。きっと「やりすぎだ」とか「何かあったら誰が責任をとるのか」等言われてきたのだろう。
・水谷氏は、少なくとも本書においては、この点一貫しているように読むことができた。すなわち、(多くの人の支えがありながらも)自分で負える責任の範囲ですべてを行っている、ということだ。
・水谷氏の立場は明確だ。「支える人」に徹し、「子どもたちを夜の街から出ていく」ようにする。それは、明日のために未来のために、と単純明快な立場である。ただ、その立場を貫くことが、現代においては最大級の困難さを伴い、常に悩み続けなければならないことなのだろう。

(以下、引用)
1:
No204 「水谷先生、彼を殺したのは君だよ。いいかい、シンナーや覚せい剤は簡単にやめさせることができない。それは“依存症”という病気だからだ。あなたはその病気を“愛”の力で治そうとした。しかし病気を“愛”や“罰”の力で治せますか?高熱で苦しむ生徒を、愛情こめて抱きしめたら熱が下がりますか?『お前の根性がたるんでるからだ』と叱って、熱が下がりますか?病気を治すのは私たち医者の仕事です。無理をしましたね」
2:
No43 目的は二つある。一つは薬物の売人や、風俗のスカウトが子どもたちに近づかないように注意すること。もう一つは、より多く子どもたちと出会い、彼らの将来について真剣に語り合うことだ。
No387 会う前に変わってほしかった。自分で決めて、責任を持ち、一歩を踏み出しなさい。私はすべての子どもにそう伝えてきた。さもないと、その子どもは最初に手を貸してくれた人間に依存するようになってしまう。それだけは避けたかった。一人の人間を一時的に手助けすることは簡単だが、一生助け続けることは不可能である。
No577 ドラッグは人を3回殺します。(心、頭、身体)
No672 子どもは失敗して当たり前である。でもその失敗を許せない大人があまりにも多すぎる。

松村卓『ゆるめる力 骨ストレッチ』文藝春秋、2015年。

・スポーツトレーナーとして活躍する著者が、「骨」にこだわって考案したストレッチを紹介する一冊。筋肉ではなく骨の動きと、それらのつながりに着目し、身体の広範囲を「ゆるめ」、心地よい動作を提案している。
・甲野善紀氏の著者等で、筋肉ではなく骨を意識することで得られる動作感覚について、学び、意識してきたことはあったが、具体的なストレッチ(ほぐし方、ゆるめ方)を丁寧に解説しているものは初めて。
・やってみると、確かにいつもと違う感覚はある。これまでと違うリラクゼーションの方法だと思われる。確かに「心地よい」という表現が合う。
・後半の「体をゆるめる=心をゆるめる」のくだりは、実感レベルでは同意できるのだけれども、気持ちや心のもちようにとどまっているため、体のしくみからリラクゼーション効果が導かれると、もっと有用と思えることができるだろう。

(以下引用)
40 バラバラではなく、すべてつながっているのです。(略)体のコリや痛みを取り除き、自然な動きを取り戻すには、まずは体ののパーツをつなげていく必要があります。そこでカギを握るのが「骨」なのです。滑らかな体の動きは、骨をうまく連動させることで実現するのです。
44 体の末端を閉じると、バラバラに動いていた体の各パーツが一つにつながり、体全体で動けるようになる。
78 骨組みで体の重さが支えられているからこそ、必要最小限の筋力でもラクに立つことができるのです。
116 姿勢のゆがみ=猫背は、体に様々な付加をかけてしまいます。主だったものは次の三点が挙げられます。 1.筋肉が硬くなり、肩や首が自由に動く範囲が狭くなる。 2.頸動脈が圧迫され、脳への血流が低下する。 3.横隔膜がふさがり、呼吸が浅くなる。
119 (「骨組み」のポイント)
1.ゆるんでいるけど、だらけてはいない
2.体を「骨組み」で支えている
3.無駄な筋力を使わずに動作ができる
122 固めるよりもゆるめること。固まりやすい生き方をしている私たちは、もっとゆるんだほうがいいのです。
167 つかみどころのない心をコントロールすることに腐心するより、まずは体に目を向け、心地よさを取り戻していってはどうでしょうか。骨ストレッチをこまめに行い、心地よく動ける体が手に入れば、心も自然とほぐれ、気持ちが前向きになっていきます。
180 居着かないように考え、発想することで、心がラクになり、これまで出せなかった力が出せるようになる。
187 常識に縛られ、居着いてしまう自分の存在をまず認めるところから初めてほしいのです。