2022年5月8日日曜日

ゴールデンウィークに思う

 4月に異動して、保育園・幼稚園の分野に関わるようになりました。言葉がわからない、制度がわからない、予算を読まなきゃいけない、伝票の決裁チェックをしないといけない、報告を受ける立場になってしまった、オペレートは全くわからない、新人がいる、などなど。持ち場と立場が変わるっていうことは、こういうことなんだなと思いつつ、感じつつ、業務がわからないことを逆手に「チームマネジメント」を考える毎日です。どうやら、出納閉鎖の関係で3月~5月連休明けまでが繁忙期のようで、超過勤務時間も半端ない。しかしながら、手を出しきれず、悶々としてきました。

 雇用支援に長年携わってきたこともあり、働き方には信条もあります。「Decent Work」へのこだわりとでも言うのがいいでしょうか。要は「超過勤務時間や、年次有給休暇の取得日数といった計測可能な変化だけでは『仕事のやりがい』は測れない」ということです。前職や前職場を含め「やらなきゃいけない時期や仕事」というのはあるわけで、やらなきゃならないことをやるための超過勤務(や休日出勤)それ自体が即ち悪いこと、とは思わないわけです。ただ、やるからには自分なりに理由やモチベーションが必要であって、それらがないものは要らない、ということです。例えば「上から言われたからやらざるを得ないが、やる意味がわからない」とか「誰でもできる膨大な仕事で、自分のためになっているかどうかわからない」といったものは、継続の有無を含めた検討が必要だ、ということです。

 このことと関連して、もう一つの視点は、いわゆる「ワークライフバランス」です。なんとなく「仕事を減らす=WLB」みたいな風潮が感じられるものですが、それだけではなくて「ライフを充実する」ことが必須だと思っています。万が一にも「仕事が楽しくてしょうがない」という人がいるなら、それはそれできちんと理由を組ませた上で、気持ちは尊重するくらいの度量がないといけないのでしょう。「用事がなくても年休をとろう」キャンペーンは継続して伝えたいと思っています。

 そんな1か月を経て、飛び石連休のゴールデンウィークでした。「つま恋」旅行、「Sayamaスキー場」へのお出かけなど、家族とのイベントっぽい時間の過ごし方をしつつ、庭掃除や子どもと公園へ行くなど、のんびり過ごす時間もとり、ジョギングなど身体を鍛える時間もとることができました。書籍の読書が習慣化しつつあるのもいい傾向かな。いろいろと考えることはあるのだけれども、先日Audiobook『運転手』(喜多川泰氏)で聴いた「いつも上機嫌でいる人のところに運を使う機会がやってくる」ということを意識しつつ、考えながらも力を抜いて、人智の及ばない大きな力みたいなものも感じられるくらいの余裕をもちたいものです。

 連休中に動かしたこと。Voicyのフォロー整理とプレミアム登録、PODCASTの整理と番組登録(政府広報関係、保育関係)、トレーニングに懸垂だけじゃない「ぶら下がり」導入、どこでも読書・小説を読もうの取り組み。

ポール・ギャリコ著、矢川澄子訳『雪のひとひら』新潮文庫、2008年。

  ちょっと遠い友人が、Facebookで紹介していたので手に取った一冊。「SNOWFLAKE」を「(雪の)ひとひら」と訳すあたり、本当に言葉の美しさを感じるお話でした。

 解説っぽい文書を読むと、「女性の一生を描いた物語」といった内容が目立ちます。たしかに「雪のひとひら」は女性人格を伴ったキャラクターなので、できごとを社会的な背景とすればそのようにも読めます。しかしながら、本書は小説なので分析的ではなく、単純に楽しむ読書にしました。

 おそらく元々の英語表現が秀でているのでしょうが、矢川氏の日本語(訳)が素晴らしい、と思える表現が満載です。訳書ながら文学作品のような日本語の美しさに手軽に触れられる一冊です。繰り返し読みたい本ですね。

ロブ・イースタウェイ著、水谷淳訳『世界の猫はざっくり何匹?ー頭がいい計算力が身につく「フェルミ推定」超入門』ダイヤモンド社、2021年。

  ネットで調べると「6.3億匹」だそうですが、これも概算でしょう。筆者はこう考えます。「イギリスでは大体5軒に1軒くらいで猫が飼われている。2匹以上飼っている人はあまりいない。よって、10人に1匹くらいの猫がいることになる。イギリスの人口は7,000万人くらいだから、イギリスには700万匹くらいの猫がいる。ところで、他の国ではそれほど猫は飼われていない(ような気がする)ので、20人に1人くらいの割合で猫が飼われていると仮定して、(世界の人口大体)80億人÷20=4億匹」。

 そもそも6億匹が概算なんだから、4億匹って答えが間違っているとは言い切れないよね。桁数が合っているし、大体正解でいいんじゃない?と考えます。最近よく聞かれる「フェルミ推定」ってこういうものと捉えています(定義はありますが・省略)。大事なのは答えが合っているかどうかというよりも、(とりあえずの)答えを出すのに、どのようなプロセスを経たか、ということに注目する、というわけです。「じゃあ、なんでも適当でいいじゃん」というとそうでもなくて、少なくとも出題者や説明を受ける人が「なるほど」と納得感が得られることと、実際の統計があるならば、どのくらい近似値が算出できるか、ということが大切になります。

 本書では冒頭の「猫」だけでなく、様々な「概算」が紹介されています。そのどれもが「なるほど」と感じさせる部分と、筆者なりのユーモアが見られるのですが、それ以上に本書から学んだことは以下2点。

 一つは、「精度」と「正確さ」の違い。数学では「正確さ=正解にどのくらい近いか」「精度=どの程度の細かさのレベルまで自信があるか」と示される。筆者は「数値を使って世の中の出来事を解釈するときには、精度よりも正確さのほうが重要だ」と言い切っている。精度が高くなくても、正確であれば推定値は役に立つ、というわけだ。

 もう一つは、「ジコール(Zequal=zero+equal造語)」という概算の考え方。この発想は「計算に取りかかる前に、すべての数を有効数字1桁まで丸めて単純化する」というもの。有効数字2桁目を四捨五入するので、例えば6.3は6、35は40とする。「精度」よりも「正確さ」を重要とする場合には、ジコールで十分役に立つ、というわけだ。35×65=2275をジコールを使うことで、40×70=2800で、2800は3000と考える。これだと1.5倍くらいになってしまうが、これが問題かどうかで有用性を考える、という考え方だ。

 社会人としての経験を重ねれば重ねるほど、物事をイメージだけでなく数的に把握することの重要性は高まっていると感じる。付け焼き刃で数的根拠を積み上げるのはなかなか難しいのだけれども、それが得意な人がつくったデータを読み解くには十分参考になる一冊でした。

小熊英二『日本社会のしくみ -雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社、Audiobook。

  主に高等教育とその後の雇用の分野における慣行の分析。日本の雇用現場の慣行だけでなく、世界の国々の事例を交えて比較するなど、豊富なデータとインタビューや各話題に関する過去の記事などから、日本における年功序列制を分析し、解説している。

 様々な論点とその分析の鋭さに思わずうなってしまう内容が多い論文だが、印象的だったのは、日本では「仕事は人についている」ということ。当たり前と思われるのかもしれないが、「仕事ありき」で人を採用するのではなく、欠けたポストに人をあてがい、ポストが属する部署の仕事をする、というイメージのことである。微妙な表現であるが、採用活動には大きな影響を与える認識といえる。採用活動に影響があれば、雇用における人の流動性にも影響が出て、社会全体の人の流動性にも影響がでる。

 欧米のいくつかの国において、職場内で転職(ポストの変更)をする、という慣行があった。エグゼクティブだけでなく、一般社員においても人事異動によって昇進するのではなく、昇進のための就職活動に参加するというもの。こうなってくると、軽く使っている「労働市場」のイメージも、それを構成する人を見たときに、全く異なる市場の姿が見えてくる。人の流動性が高まる、ということも日本においては新たなモデルを創出する、くらいの意識で考えていかないと、日本の良き雇用慣行がズタズタに壊されてしまう危険をも感じた。

 本著は全体を通して、基礎文献に位置付く内容といえる。著者が政治的な主張をしているわけではなく、日本の現状を淡々とデータを積み上げて理解する内容といえる。「平易な表現」と言いつつ、結構難しい部分もあったが、タイトルにあるように「雇用、教育、福祉」の分野から社会のしくみを理解する基礎文献として、非常に有用な一冊といえる。

吉野俊幸『あなたの知らない あなたの強み ー宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる』日系BPマーケティング、2020年。

  何かの媒体で紹介されていたのを目にして、本屋さんに行ったら平積みになっていたので、思わず手にとった一冊。正直、FFS理論が何なのかよく知らずに手にとった書籍でした。

 広告だったか立ち読みだったか記憶は曖昧ですが、「自己分析と人間関係を円滑にする」といったようなことを学べそうだったことに、私の好きな「宇宙兄弟」がモチーフになっていたのが購入の引き金になった、というのが一番事実に近いと思う。世には性格分析やリーダー論が多数紹介されており、どれを読んでも「なるほど」と思うところはあるものの、どこか自分の人間関係に当てはめる(行動に反映させる)ことに抵抗があるものも少なくない。それは「自分が心地よくなるための環境作り」に終始していると感じてしまいがちなことと、なんとなく「上から目線」感(○○すればいい、してみればいい、みたいな感覚。著者が実際そう思っているかどうかは不明)を受け取ってしまっていたからだと思う。もう少し違った角度から人間関係を考える視点を期待して手に取った、ということがあった。

 こうした背景の下で期待した内容の一冊でした。人間関係において、目の前の事象を自分が「どう捉えるか」ということは結構大事で、自分の気分を調整するために必要な視点ですが、本書はそれは踏まえつつも「相手を理解する」ためのヒントや、具体的な行動が満載の内容でした。相手のタイプを大まかに捉えて、行動を評価するための視点と、自己理解を深めて得られた特性とを掛け合わせて、人間関係とチームビルディング双方に役立つ知見が満載の一冊です。おそらく学術的な知見が基になっているのでしょうが、『宇宙兄弟』のキャラクターを通じて、大変とっつきやすい内容でまとめられています。

 ちなみにIyokiyehaは「シャロン型」で受容性が高いとの結果でした。「いい人病」にならないよう相手が反応することを信じる姿勢を磨き上げていくことが、自分の個性を活かすことになるとのこと。なるほどねぇ、と思うところと、あぁそうなのか、と思うところと、深さと広さが見える説明でした。

佐々木圭一『伝え方が9割』ダイヤモンド社。Audiobook

  以前読んだことがある本。相談業務をやっていると、「相手(お客さん)に伝える」ことを考えない日はないわけで、その立場から改めて「伝え方」を学ぼうと思ったのと、Audiobookが割引価格で販売されていたので、購入。

 改めて、人に何かを伝える時には「言葉」を介して行うのだと実感した。もちろん、雰囲気や伝え方、身振り手振り、表情なんてことも大切なのだけれども、それを仕掛けるのはやはり「言葉」であり、この道具としての「言葉」は磨くことで伝わり方が良くも悪くもなることを確認した。平易な言葉、逆の言葉、注意喚起など。手法としては、①サプライズ法、②ギャップ法、③赤裸々法、④リピート法、⑤クライマックス法が紹介されている。

井上大輔『マーケターのように生きろ ー「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動』東洋経済新報社。Audiobook

  相手の立場に立ってものを考えること。評価されることには、自分が理解できない背景があるかもしれないこと。誰に何をどのように届けるのか、考えて行動することが、結果として有用なものを生み出す。