2008年8月31日日曜日

石山勲『精神保健・医療・福祉の正しい理解のために ――統合失調症当事者からのメッセージ――』萌文社、2005年。

統合失調症当事者から見た、精神医療、保険、福祉制度について、率直な意見が論じられている。
Webで横行しているような、現行制度に対する批判ではなく、自らの経験をできるだけ客観的に記述しており、制度に関する指摘も自らの経験から、早急に検討すべき示唆が多数含まれているように読み取れる。
統合失調症が「思考方法・内容の障害」であるとされる理由を、自らの経験から見事に説明している(57~58ページ)箇所は、当事者でなければわかりにくい概念を、理解しやすい言語化しているといえる。

いつも通り、当事者によるものは、謙虚に学ぶ姿勢で読ませてもらっている。
制度に関する指摘も、それを活用したい当事者にとってはもっともな話で、早急に議論されることを願うとともに、制度の隙間をそれに携わる行政職・専門職がマンパワーで埋めていかなければならないことを示唆しているように読めた。
自らの業務は、常にこうした視点から見直さなければならないと思う。
ただ、一箇所だけ気になったのは(Iyokiyehaがそれに関する仕事をしているからであるが)、雇用率に基づく納付金制度を「罰金」と一言で書いてしまっている箇所である。
そんな細かいことはさておいても、非常に学び多い書籍であった。
統合失調症の説明に関しては、時に業務の中でも使わせてもらっている。


おすすめ度:★★★★☆