2018年4月7日土曜日

歓送迎会には行かない

 職場の集まりというものに、参加しなくなった。
 歓送迎会、暑気払い、新年会、懇親会等の類である。
 私としては、別に何とも思わなかったことだが、以前友人から「職場の雰囲気ってもんがあるだろう」と言われたこともあるので、一度きちんと考えておく。

 まず、「なぜ」歓送迎会等に行かないのか?という問いについて深めてみる。
 行きたいと思わないから。なぜ?
 楽しくないから。なぜ?
 気をつかうから。なぜ?
 職場の延長になってしまうから。なぜ?
 職場の人間関係を持ち込まれるから。また、持ち込んでしまうから。なぜ?
 儀式的な場がそうさせてしまうから。なぜ?
 場がそういう雰囲気になるから。または、そういう雰囲気を感じてしまうから。
 これで、初めの回答に接続し、サイクロジックになる。

 結果として、仕事外時間の削減、つまり自分と家族の時間が削られてしまうことになる。「いやいや、業務外でしょ?」と言われても、上記の通り、そこに職場の雰囲気が持ち込まれるのであれば、その問いかけは全く無意味である。

 それでは、今度はメリット・デメリットの視点から考えてみる。
 ・歓迎会等に参加しないメリットとしては、
 ・時間とお金の節約になる。
 ・気分を害する場所へ行かなくて良くなる。
 では、参加しないデメリットは、
 ・職場内人間関係を進展させる機会が減少する。
 ・飲酒機会が減少する。
 ・他の人から「飲み会に来ない人」のレッテルを貼られてしまう。
 ・他の人から「感謝の気持ち・歓迎の気持ち」がない人であると思われてしまう。
 といったところだろうか。

 これらの理由を、自分事、と他人事に分けてみると、デメリットとしてあげたことの内、自分に直接関係あることは「(自分が)職場内人間関係を進展させる機会が減る」ことと、「(自分の)飲酒機会が減る」ことくらいになる。あとは「○○と思われる」だけであり、本当にそう思われるかどうかは疑問が残る。
 加えて、今の職場の人間関係規模とすれば、40~50人の規模である。そのうち7~8割の出席と仮定しても、参加者は30人前後。初めての人たちの集団では、とても名前なんか覚えられる規模ではない。私一人がいなくて、誰の迷惑になるだろう。
 さらに言えば、私がそこに参加することによって、誰か他の人の誰の何のためになるのかというと、大変曖昧といえる。歓迎されている感じや、感謝されている感じは、「そうなる対象であれば自然と与え・受け取れること」であり、それを飲酒の場として設定することは、有効であったとしても必要なことではない。

 と、ここまで考えたら、あとは自分の気分で「行きたい」か「行きたくない」かで判断して特に差し支えないと考えることに特に問題はないだろう。職場の人間関係は仕事で作ればいい。私は今の職場では、自分に最も近い二軸の集まりにしか参加しないことにしている。それで、自分の機嫌とお小遣いが保てるのであれば、人からどう思われようと関係ない。

2018年4月1日日曜日

刎田文記、江森智之『成功する精神障害者雇用 ――受入準備・採用面接・定着支援』第一法規、2017年。

 Iyokiyehaは、障害者雇用の仕事を離れて2年になります。そろそろ障害者福祉分野の知識量が障害者雇用分野のそれを超える時期になるのでしょうが、そうは言っても11年どっぷり浸かってきたところですから、本書はあえて踏み込んで紹介します。

 障害者の雇用の促進等に関する法律の見直しもあり、障害者雇用率の引き上げ時期となりました。各企業・団体等で人事に携わる人達を中心に、障害者雇用率、ひいてはその算定のための障害者雇用が注目されているように思います。
 Iyokiyehaは障害者福祉分野に転職してから実感を伴って理解したところもあるのですが、障害者手帳の交付数とその種類および交付者の年齢を考慮して、障害者雇用を具体的に検討した場合、精神障害者(厳密には精神障害者保健福祉手帳所持者)の雇い入れを検討しなければならないのは、ごく自然な流れのように思います。また、「精神障害者の雇用義務化」という表現がいつの間にかされるようになりましたが、精神障害者が障害者雇用率の算定に含まれるようになるという法制度の改正が、精神障害者の雇用を促進する流れを作っているように思います。
 ここ2年間の事業主の悩みからは遠ざかっているのですが、私が4年くらい前に関わっていた調査・研究から、障害者雇用を検討する人事担当者の悩みとしては、「障害がわからない」「障害のある人との接し方がわからない」「雇用してどのように仕事をしてもらったらいいかわからない」「雇い入れの方法がわからない」といったようなことがあげられていました。
 前置きが少し長くなりました。今回紹介する本書は、そんな疑問の助けとなってくれる情報が一杯の一冊です。同業者、関連業者、その他、障害者雇用分野に関わる人の中には著者の所属にいろいろ言う人もいるかもしれませんが、それはそれ、これはこれ。内容について、具体例やケーススタディがたくさんあるので、それを読むだけでも十分情報収集になるのですが、元専門職として本書の特徴をあげるならば、以下の2点です。
(1)広義の精神障害の特徴を、雇用しようとする企業の立場に立脚し「認知障害」という横断的な概念を取り入れた説明をしていること。
(2)「合理的配慮」に関する現時点での具体的な対応を多岐にわたり掲載していること。
 私にとっては、(1)の視点が本書のスパイクだと思います。制度上の「精神障害」は、統合失調症、気分障害、てんかんを包括した狭義の「精神障害」だけでなく、発達障害や高次脳機能障害、さらにはアルコールや薬物の依存症、BPDなどの人格障害等をも含む、とっても広い概念ですから、一言では説明がしにくいところがあるところを、あえて共通点としての「認知障害」を提示し、職業的課題として強調しているところです。我が国では手帳制度が3種類に分かれていて、このことが医学的な心身二元論(頭の中で起こっていることか、それ以外か)と重ならないために、「精神障害って何よ?」という問いに「人によって違います」みたいな回答をせざるをえない現状打破のきっかけになる可能性を秘めています。
 障害のある人が入職していくことについて関わっている人には一読の価値があると思います。