2014年4月14日月曜日

井寄奈美『小さな会社のトクする人

社会保険労務氏の井寄氏による雇用ルールのシリーズです。以前、雇用調整に関する『トラブルにならない謝意員の正しい辞めさせ方給料の下げ方』を読みましたが、法律知識もきちんと盛り込まれているので、大変参考になります。仕事においても「辞めさせる」のではなく、辞めさせ方を知った上で「守る」ための知識として相談時に活用させてもらっています。
内容は労働法に関するものですが、本著は中小企業の社長・管理職向けに書かれているものと思われ、各話題の入り口は大変身近で具体例から関連法へと導かれる体裁をとっています。そのため、法律から探すのではなく、困った話題から関連する法律へと導いてその解説をしているので、一読だけでなく、今後もテキストとして傍らにおいておきたい一冊になりました。
同業者だけでなく、働くことに関わるすべての人におすすめできる一冊です。

2014年4月13日日曜日

ゴーサインへの躊躇

水滴が水面に落ちる。
小さな水飛沫と、広がる波紋。
そしてしばらくするとまた静かな水面へと戻っていく。
そんなイメージが頭に浮かぶ。

プライドをかけて取り組んできたことが、こんな形で幕切れになるとは何とも残念だ。
全てが無駄ではないのだろうけれども、結果いいようにやられてしまった感じで一杯になる。

無力だ。

怒りと失望の合間から寂しさと悔しさが頭を出す。悲しい気持ちにさえなってしまうのは、一体何なのだろう…
ここまでやってきたのに、という自分本位の思いがあるかもしれないけれども、それが努力の甲斐無くあっさりと無に帰していく過程に向かうためのゴーサインを出してしまったことへの後悔もあり。
自分が引き金を引くことへの躊躇かもしれない。

2014年4月6日日曜日

ヨラム・バウマン著、山形浩生訳『この世で一番おもしろいミクロ経済学 誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講』ダイヤモンド社、2011年。

勉強は漫画から入ってはいけない、というのは何かを学ぶ時に言われることですが、気軽に読めてある分野の言葉に慣れることができるのならば、そのツールが漫画であっても構わないというのはIyokiyehaのスタンス。確かに本書を読破したからといって、ミクロ経済のことがわかるというわけではないのだけれども、そのもっと手前で「ミクロ経済って、人々の日常行動を説明するもの」くらいのイメージを持つことはできると思います。
漫画という表現方法は、緻密な説明というよりもそれらを俯瞰する視野を得るものだと思います。普段あまり考えないこと(現在価値とか、最適化とか)も、あえて(難しそうに見える)言葉を与えた説明を聞いてみると、案外身近な行動を合理的に行うヒントになったりします。

経済学をきちんと学ぶのであれば、おそらくもっとよい教科書が出ていると思いますが、それをあまり意識せずに考えてみたい人にはおすすめの一冊かと思います。同じシリーズでマクロ経済学や統計学も出版されています。

2014年4月3日木曜日

竹内圭『人事課 桐野優子』ザメディアジョン、2014年。

障害者雇用分野の中でも、特にアスリート就職を主とした就職支援をする会社として知る人ぞ知る「つなひろワールド」を介した採用を描いた小説。
営業部署から人事課に異動した桐野優子というキャラクターが奮闘しながら、社内の雰囲気も変わっていくというハートフルなお話です。大変わかりやすいストーリーの中で障害者雇用制度のエッセンスやポイントがまとめられており、この分野に関係・興味のある人なら十分楽しんで勉強になる一冊だと思います。

一応、私はこの分野で最前線の現場に立っているので、その意味では目新しい情報があったわけではないですが、桐野が雇用の企画書を何度も何度も書きなおしている時に気付いた三拍子「コスト・環境・業務の切り出し」をトータルで考えることが、企業にとって現実の採用活動においても大切な視点になるのではないかと頷いたところです(116ページより)。

こうの史代『ぼおるぺん古事記一 天の巻』平凡社、2012年。

以前にも一度レビューしましたが、2巻、3巻を購入したので再度読んでみました。
古事記というと、私のような若造にはやはり敷居の高いものと感じてしまうのですが、漫画になっていることもあり大変親しみやすいものでした。とっつきやすさもさることながら、物語も「神様の生活」ともいえるでしょうか。喜怒哀楽に基づき、いろんなものに神様が宿っていることを様々な箇所から読みとることができ、神道(なのか?)の基盤ともいえる人格化した神様、そして八百万の神といったことが、これでもかこれでもかと見えてくる一冊だと思います。

渡辺大地『産後が始まった!夫による、産後のリアル妻レポート』KADOKAWA、2014年。

私が現在住んでいる所沢市で産後サポートを展開している渡辺氏が、これまでの知見を元に産後の夫婦の生活を漫画化した一冊です。
IyokiyehaはNPO法人Fathering Japanの会員であることもあって、この手の書籍はだいたい目を通しているのですが、これは秀逸。夫による産後のサポートは認知されてきたように思いますが、それを等身大で失敗談ベースの話に書き起こしていることが、どれだけ「イクメン」ハードルを下げてくれているか、と痛感しました。
なんと言っても面白い「あるある」がいっぱい詰まっています。「最近、いろいろあるけれどどれから読んだらいいかわからない」というパパさんには、『新しいパパの教科書』とともに本著をおすすめします。