2019年12月31日火曜日

17年越しの到達点

こんなことばっかりやってるから、Iyokiyehaはいつまで経っても小さい人間止まりなんだけどね。
森岡正博氏の著書を時系列で読んでみよう個人プロジェクト(仮)を始めて、大体一年が経ちました。修士論文で取り上げた(今となっては「と思っていた」だな・反省)「生命学」について、引用だけど自分の中でようやく言葉にできたので、備忘録。
久々に頭の中でスパークが起こって、知的に気持ちいい勢いでまとめてみます。こういう知的快感があるから読書はやめられない。

「生命学の知の方法」とは、以下の通り。
・「他者」が「現前」する。
・この「痕跡」に気づき、(自分が)ゆらぎ、(自分の生き方を)問いなおし、(自分を)変容させ、生きなおす。
・この新しい生を通じて、人々に「ゆらぎ」(前文の過程)を伝える。


他者:私の意向と関係なく、私の世界の外部から一方的に到来する何ものか。自己の優位性を根源的な仕方で脅かす何ものか。
現前:すでにいないはずのひとが、そこに現れていること。ものに対しても同様。
痕跡:他者が現前する形式。

参考:森岡正博『生命学に何ができるか ――脳死・フェミニズム・優生思想』勁草書房、2001年、78~84ページ。

2019年12月22日日曜日

働くことコラム09:雇用支援と就労支援

このテーマ、学術的にどのように分類されているのかということは、まだ調べていないのであくまで現場感覚ということで。

私の職歴は「11年間、障害者雇用支援をやってきました」と言える。転職後、今でもこの表現を意識して使っている。大半は「あぁ、就労やっていたのね」という反応です。全く間違いと言い切るわけではないが、厳密にはやっぱり間違いです。
ここで言うところの「就労」というのは、そのまま「就労支援」のことを指すわけですが、この言葉を踏み込んで(障害者支援諸分野で)その意味をつけるならば、「福祉の立場で対象となる人が『働くこと』を支えること」になるでしょう。
一方で「雇用支援」とは何かといえば、「雇用関係が、広がり、維持され、適応状態がよくなることを支えること」となるでしょう。

「就労」は人を、「雇用」は関係を支えること、これが言葉の意味する本質かと思います。
「じゃあ、Iyokiyehaさんは、障害のある人を支えてこなかったの?」と言われれば、答は「否」です。もちろん、現場の支援職ですから、人を支えてきた(つもりです)し、雇用する企業を支えてきたつもりです。結果として自分は「雇用支援をしてきた」と思います。私の仕事を身近に見てきた人ならば、私の仕事が「就労支援」では収まりきらないことは感じられていたものと思います。「そこまでやらんでも」と言われたことの中には、私が「雇用支援」として大切だと思っていることが含まれていたと考えていました(もちろん、無駄はありましたが)。

ここから先はこのコラムとは別の話題で深めていきますが、制度として「純化」されたものや、定義のあることと、それを具現化するための現場で施行することとの間には、ほとんどの場合差が生じます。制度が現場の意見を反映していればしているほど、その差は小さくなると思いますが、それだけではなく時が経てば施行当時の背景とは環境が異なるわけですから、差は大きくなりやすい、ということができると思います。

自分が就職や転職を考えた時に、厚生労働省の雇用対策に関するデータが自分の就職活動にはほとんど役に立たないのと同じように、雇用支援施策は「その対象者のとなるべき人の背景と制度設計上の対象者像が異なる場合、効果は著しく削がれてしまう」ということが言えると思います。職業訓練の受講指示をがあったとしても、主体的に取り組む意思が弱い人には残念ながら効果が薄いのが、雇用支援施策全般に言えることだと思います。

働くことって、それくらい「わたし」が大切になります。希望だけじゃなくて、自分の置かれた環境や職歴を含めた自分の背景、が大切で、それは自分の生活の上にしか成り立たないものといえます。

デイヴ・アスブリー『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』ダイヤモンド社、2018年。

「ハッカー」(バイオハッカー)hack ~をたたき切る、切り開いて進む、勝手に引き出す、改変する
・前著『食事法』の時に感じたうさんくささ(ので、読書を中断してしまった経緯がある)が、かなり薄れている内容であると感じた。
・生活をエビデンスベースで見直すということにおいては共通した内容だが、「健康や高い生産性を維持できる状態」を目的として、生活全般の理想的なあり方について、最新の知見と著者の経験から論じている。
・身の回りにあって、普段自分の身体に取り入れているほとんどすべてのものが、人の身体に(あまり良くない)影響を与えている。
・本書の特徴は、この点についていわゆる「身体にいい影響があるもの」を理想的に説明するだけでなく(そういう箇所がもあるが)、身体の仕組みから説き起こした上で「よりダメージの少ないもの」や「より(悪い)影響が少なくなる生活習慣」について、生活上のちょっとした工夫のようなものを併せて紹介点・説明しているところであるといえる。
・そして、食べることだけでなく、睡眠や生活習慣、特に身体を動かすことの効用については丁寧に論じている。
・希少、高額、入手困難なものがまだまだ多いのも事実で、理想・非現実的と言われる内容かもしれないが、その中でも普通の人が取り組めるいくつかの具体的な提案が示されているのは、冒頭の「うさんくささ」を軽減するのに一役買っているといえるだろう。

■以下引用
27.(疲労の定義)ミトコンドリアが過度な要求を受けているという最初の兆候が「疲労」である。
30.(3つのF)永遠につづく種をデザインするとしたら、ただ3つの基本的な能力がを組み込むことが必要になる。(中略)Fear(恐れる:持ち前の「闘争・逃走反応」を使って、環境に存在する恐ろしいものに対処する)、Feed(養う:食物からエネルギーを得る)、そしてもう一つのF※※※(生殖のこと!)。僕らの体は、世界から降りかかってくるどんな状況下でも生き延びられるよう進化してきた。僕らのシステムはその理屈にしたがって、細胞にエネルギーを分配する。(中略)ラブラドール脳(「爬虫類脳」という生存のための低次元のプロセスを司る脳とは別の機能を指す)は種を生き延びさせ繁殖させるための本能--前述した3つのF--を司る。この脳はよかれと思って動いている。あなたを生存させようとしているだけだ。だがここで問題なのは、生き延びるためのまさにその衝動が、脳エネルギーの大問題を引き起こしかねないことだ。(中略)僕らの体が「本物の脅威」と「脅威と考えられるもの」とを区別できないことだ。(中略)あらゆる刺激に同じように反応してしまう。
129.(炎症)・「慢性の炎症」を抱えているとき、体の中で最初に悩まされる部分は脳である。・「炎症を起こしたミトコンドリア」はエネルギー生成の効率が低かする。なぜなら電子が、同じ場所に辿り着くにも、より長い距離を動かざるをえないからだ。
138.(ポリフェノールと脂肪)しかし、ポリフェノールは、一部の例外を除いては、人体に簡単に吸収されないのだ。ポリフェノールの大多数は、人体が使えるようにするにはささやかな助けが必要だ。そして、その最善の方法は、僕の一番好みの主要栄養素、脂肪と一緒に摂取することだ。(コーヒー、チョコレート、ブルーベリー、ざくろ、ぶどう(実と皮))
163.(ケトン体)ミトコンドリアがケトン体をえさとして使って、アデノシン三リン酸(ATP)を生成しているときが、ケトーシスの状態にあるときだ。(略)ケトン体を代謝しているとき、グルコースを代謝しているときよりも心臓は28%多くエネルギーを得ている。(MCTオイルまたは炭水化物制限)
173.(良い食べ物)(ポリフェノール。炎症を低減する。吸収には脂肪が必要。神経伝達物質を作るために、牛肉、アーモンド、卵、ラム、天然物もののサケががよい。低糖の果物と、野菜、グラスフェッドバター、魚)
261.(呼吸)呼吸は、意識的にも無意識にも自然に行える唯一の行為であり、他に類のない生物学的機能である。(中略)体内の酸素量を増やす唯一の方法は、短い時間、酸素の摂取を制限すること(高地トレーニング、息を吐き切ること、吐ききって腕立て伏せをする、インターバルトレーニング、など)
290.(運動の効能)運動は体型を良くするのみならず、環境に適したミトコンドリアの生存を促しもする。(中略)定期的な運動はうつとこ闘いにおいて少なくとも抗うつ薬と同じくらい強力である