2008年8月10日日曜日

小林美佳『性犯罪被害にあうということ』朝日新聞出版、2008年。

性犯罪の被害にあった女性によるノンフィクション。
被害にあってから、現在に至る心身の揺らぎを、自身の言葉で書ききっている。
迫力ある文章で、読み手の私には何とも言いがたい感情を植え付けた一冊だった。

男性性である私としては、性犯罪という最も忌むべき犯罪が、ゲーム感覚で行われていることに怖さと憤りを覚えた。
「何を考えているかわからない人」の「わけのわからない行為」により、男性性が一括りにされてしまうことには、怒りすら感じる、私の住む日本でも同様の犯罪が今でも起こっていることに恐ろしさを覚える。

性別が異なることにより、容易に理解し共感することはできないが、女性性を意識して想像すると、行為そのものに対する恐怖と、人間の尊厳を踏みにじられる恐怖、そしてその経験を持ちながら社会で生きることを半ば強要されてしまう恐怖など、得体の知れない「怖さ」が同時多発的に襲われながら生活しなければならないのではないかと察する。
犯罪に手を染める者は、自らの一時の快楽のために、その対象者を社会的な瀕死状態とも言うべき状態に追い込んでいるように思う。
人を物理的側面と精神的側面と分けて考えることができるのであれば、殺人がその両方の機能を停止させてしまうのに対し、性犯罪は物理的な部分的破壊を通じて、精神的側面の「同意を得ない変化」を強要することと言える。
そして、この犯罪に対する「偏見」というものも、おそらく私自身がまだ掴みきれていないほどの誤解がまかり通っているようにも思う。

自分なりに、一人の人間としていろいろ考えさせられる一冊であった。


おすすめ度:★★★★☆