2008年5月10日土曜日

精神医学(草稿)

精神保健福祉法による精神科入院形態のうち医療保護入院と応急入院、措置入院と緊急措置入院を比較して違いをまとめる。


1.はじめに
精神障害者の入院形態は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」)で定められている。
医師が当該精神障害者(以下「本人」)に対し、入院が必要と診断し、それに本人が同意すれば入院となる(任意入院)。しかし、本人の同意が得られない場合や、精神障害により本人が入院に関する妥当な判断ができない状態と精神保健指定医(以下「指定医」)が判断した場合、保護者の同意や、指定医の判断等により、本人を入院させることができる場合がある。以下、精神保健福祉法で定められた任意入院以外の入院形態をまとめる。

2.医療保護入院と応急入院の違い
 医師は入院が必要と診断したが、本人は入院に同意しない場合、精神病院の管理者は以下の条件により、本人を入院させることができる。
(1)指定医が入院は必要と診断した
(2)保護者(精神保健福祉法20条による)またはそれに準ずる者(同法34条2項)の同意がある
(3)上記(1)の診断の内、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障があると診断される
本人の同意なく入院させる場合、条件(1)は必須項目である。その上で(2)の有無を確認する。保護者の同意により「医療保護入院」となる。また、保護者がいない場合は、本人の扶養義務者の同意により、家庭裁判所が保護者の選任をするまでの4週間に限り本人を入院させることができる。
 さらに、医療および保護の依頼があった者について、急速を要するために、保護者等の同意を得られない場合、指定医が本人を(3)と診断することで、72時間を限度に本人を入院させることができる。これを「応急入院」という。

3.措置入院と緊急措置入院の違い
 指定医が入院を必要と診断したが、本人が入院に同意せず、かつ保護者等の同意も得られない場合、都道府県知事は、指定する指定医が本人を「医療および保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある」と認めた場合に、国等の設置する精神病院又は指定病院に入院させることができる。これを「措置入院」という。
2人以上の指定医により入院が必要と診察すれば、通常の措置入院だが、急速を要する場合に1人の指定医の診断で入院させることもできる。この場合は「緊急措置入院」となる。入院期間は72時間に制限され、その期間内に通常の措置入院とするか否かの決定が必要となる。

4.まとめ
精神保健福祉法は、その性質(本人の同意なく、本人以外の者の同意や措置で入院させることができる等)や、人権への配慮とそれを擁護する観点から、数度に渡り改正されてきた。近年の統計(平成8年~16年、『精神医学』238ページ。)によると、入院患者数は減少しており、任意入院者が全体の6割強を占め、措置入院者の割合が減少し、医療保護入院者の割合が増加している。このことから、インフォームドコンセントが意識され任意入院が適用されていることや、本人に対する当事者の理解の広がりや深まりを読み取ることができる。
 また、医療保護入院や措置入院は、精神医療審査会(都道府県知事が任命する委員によって構成)が定期的に報告を受け、診断の妥当性を審査する。さらに、本人や保護者は、退院や処遇の改善を都道府県知事に請求できる。その内容も精神医療審査会が審査し、適切に対応する。このように、本人や保護者等の希望に沿いつつ適切に判断できるよう、専門家が適切に介入するしくみとなっている。
 以上まとめた通り、精神保健福祉士は精神障害者の入院を直接判断する立場にない。しかし、指定医が本人の入院の必要を判断するのに必要な情報を、正確かつ的確に把握し伝達する役割は課せられていると考えられる。精神保健福祉法の目的を実現できるよう、当事者と向き合っていきたい。




(勉強メモ)


(入院形態のフロー)

※なお、公開されている文章をコピーして提出課題とするのはやめてください。