2008年5月11日日曜日

精神保健学(草稿)

「精神保健とは何か」をまとめる


1.はじめに
 「精神保健」とは、「メンタルヘルス」と呼ばれる「心の健康」を表す。また、WHO憲章(1948年)の前文にある「健康」の内、心理面を対象とするものを「精神保健」という。
 本レポートでは、テキスト『臨床に必要な精神保健学』(弘文堂、2008年)の内容を中心に、「精神保健」の目指すものとその対象、「健康」の概念についてまとめる。

2.精神保健の目指すものとその対象
 テキストでは、精神保健活動の枠組みと方向性を示すものが精神保健で、それを元にして行われる実践的活動をメンタルヘルスとしているが、これらは基本的に同義といえる。
その上で精神保健の目指すものとして、5項目をあげる。以下、その内容を要約する。
 (1)穏やかに健やかに日常生活を送り、さらに健康度を増進させる
 (2)生活の中で、心の健康に悪影響を与えるものに気づき、「心の不健康状態」となる前に対処できるよう援助する
 (3)(2)の対処がうまくいかない場合に、その状態を早期発見できるよう援助する
 (4)(3)と平行し、早期に治療的対応の援助をする
 (5)精神障害者の希望を考慮した社会復帰を目指し、また、そのための社会資源の整備を行う
 このように、精神保健の対象は精神障害者に限らず、心理的に健康な者や、病気ではないが不安や苛立ちを感じている半健康な人も含む。また、人が生活する「場」も対象となる。
 ただし、現在、精神保健のサービスや活動として実施されているものの中には、精神障害者のみ対象としたものもある。テキストでは、目的は「国民の精神的健康の向上」をあげつつ、内容の多くが精神障害者を対象としている精神保健福祉法を例に説明している。このように、精神障害者の治療や社会復帰のみを対象とする精神保健を特に「狭義の精神保健」とする考え方がある。この場合、前述した5項目によって目指す精神保健は、「狭義の精神保健」を包括した「広義の精神保健」とされている。

3.精神保健が目指す「健康」とは何か
 前述した5項目により、精神保健が主に目指すものは、健康度の増進、「心の不健康状態」の予防、その早期発見・治療、精神障害者の社会復帰といえる。本節では、ここで使われる「健康」の概念を整理する。
 WHO憲章では、以下のように定義されている。
健康とは、身体的、心理的(精神的)、社会的にもwell-being(よい状態)な状態をいうのであって、単に病気や虚弱でないことをいうのではない
 これは、「社会で人間らしく生きる」ことを含んだ考え方で、健康が個人の責任によってのみ獲得できるものではなく、国や社会の協力を含めて初めて獲得できるものであることを示す。
 例えば、仕事に就きたい人が、精神障害の症状により長時間勤務が難しい場合、適切な就労支援により、事業所に理解を得た上で短時間勤務から仕事ができる場合、その人は社会的によりよい状態(well-being)になるといえる。これは、その障害者の努力や意志も去ることながら、適切な支援制度があって初めて実現する健康といえる。
 WHO憲章では、健康の絶対的な理想像を定義づけているが、現実には相対的によりよい状態を目指すことになる。

4.まとめ
 精神保健とは、精神障害者に対するサービスの考え方や実践だけではなく、身近な生活の場所を含む、ありとあらゆる人と場所の健康を維持・増進する考え方や実践であるといえる。
 よって、精神保健福祉士が取り組む精神保健の現場も、精神障害者の医療・保健・福祉だけでなく、私の身近な職場や地域社会、生活を支える制度等、人々の絆、物理的環境、制度の調整も含まれる。私が関わる全ての人が、自分なりの健康を維持・増進できる調整も、確かな精神保健だろう。時と場所、場合に対応した様々な精神保健を実践できる精神保健福祉士になりたい。



(勉強メモ)


※なお、公開されている文章をコピーして提出課題とするのはやめてください。