2007年10月28日日曜日

デボラ・R・ベッカー他著、堀宏隆、他訳、大島巌、他監訳『精神障害をもつ人たちの ワーキングライフ』金剛出版、2004年。(5)60ページまで。

第5章
「IPSの研究」

IPSに関する研究成果のレビュー。従来のプログラム(デイケア、職業リハビリテーションプログラム(トレイン-プレイス)などと比較しても、IPSアプローチによるサービスの方が高い就職率、定着率を示している。

○一般就労ストレス
 一般就労することによって生じるストレスについて、再発や臨床的に好ましくない状態になるという研究結果は「ない」。むしろ、「働いていないストレス」がある。働くことにより、長所strengthの強化にもなる。働くことにより、「患者」から「労働者」へと意識が変化する。

○従来サービスを廃止することに関する議論
1)従来型サービス廃止をするにあたり懸念されること
 ・日中活動の場がないと、退屈になったりトラブルになったりする
 ・就労によりストレスが高くなる
2)(反論)クライアントは「働く」ことを望む
 「働くこと」=「大人の役割」
       =プライドの維持、病状管理、交友関係の拡大、などを含む
      ⇒QOLにはプラス効果がある
3)IPSの証拠
 ・デイケア等から離脱しても、負の結果は増加しない
 ただし、ごく少数ながら「孤独感」を訴える者がいる。そうした人は、地域支援センターやソーシャルクラブなどの、地域資源を利用することによって、生活の満足度が向上する。

○研究結果の理解の仕方
1)一般雇用は現実的な目標である
2)迅速な求職活動が有効である
3)臨床サービス-職業サービスの統合により効果がある
4)職業選択について、クライアントの興味に注目する(満足感や職場定着に影響)
5)様々な仕事にチャレンジした中での継続的アセスメントにより、自分・能力を知り、ニーズを学ぶことになる
6)期間を限定しないこと