2007年8月26日日曜日

茂木健一郎『「脳」整理法』ちくま新書、2005年。

茂木健一郎『「脳」整理法』ちくま新書、2005年。

自分以外の世界を冷静に捉える「世界知」と、自分自身の生にぴったりと寄り添う「生活知」の関係と、それを考える上で重要となる不確実性「偶有性」について深める内容。情報があふれる昨今、脳の中で実際に進行している情報処理メカニズムを「脳整理法」と記述し、個人の生き方を考えさせる。行動することによって得られるセレンディピティと、それによる個人の更新と言うべき成長(学び)や、他人とのコミュニケーションによって「私」は維持され育まれること、物事を考える際に言葉によるラベルづけをすることによって自分自身を棚上げしてしまう危険性など、脳の働きについて様々な角度から論じられている。その上で、安定性とダイナミクスの両立を提案する。
題名からもっと身近な脳のノウハウ本と思い読み始めたが、読み応えのある論文だった。各章毎のまとまりは明快で、随所で学びのある読み物。