2024年4月29日月曜日

寺地はるな『ガラスの海を渡る舟』PHP研究所、Audiobook版。

  発達障害の疑いのある道と認められたい羽衣子。凸凹きょうだいの二人が、祖父の死を受けてガラス工房を始めるお話。モチーフに東日本大震災や、コロナ禍が語られる。

 ガラス工房で「骨壺」を中心に、ありとあらゆることで衝突する二人と、それがいくつかのエピソードを経て氷解していく。少なからず人間関係が変化していく、その感情の動きを静かに、しかし確かな変化を伴い表現される。それぞれの時期に、それぞれの立場・見え方から語られる物語は、頭の中にすっと入り込む描写とはいえ、じわじわと深いところまで入り込んでいく。終章まで進めると、きっと気持ちが軽くなる内容です。

 表現で印象に残っているのは、

・新しいことは、いつも静かに始まる。イベントのように用意されたものではない。

・解決しないことは、対処すればいい。