2024年4月29日月曜日

木宮粂太郎『水族館ガール』実業之日本社、Audiobook版。

  正直なところ、中学生向けのティーンズ小説かライトノベル的な読み物かと思っていたし、そんな軽い読み物を欲していた時期の聴き放題コンテンツだったので、軽い気持ちで聴き始めたが、これがなかなか読ませる内容でした。

 内容については解説に詳しい記述がありましたが、いわゆる「職場」小説から、「専門職」小説へ、そこに個性的な人間関係が加わって、軽い語り口でありながら、水族館職員のマニアックなやりとりから、イルカの生態まで、いろんな角度から「水族館で働くこと」が浮き彫りになるような内容となっている。水生動物を扱う博物館としての位置づけもきちんと据えられており、「水族館とは何なのか」「その役割の変遷から不変の価値」「わかりやすさ、を考える」など、専門職が抱く矛盾とそれに向き合う若い出向自治体職員の奮闘が、エンタメとしても読ませる内容で描かれている。

 軽い気持ちで手を出した本ですが、なんともなんとも、自分の興味関心をバシバシと突いてくる内容でした。面白い読み物です。