2008年2月25日月曜日

山田真哉『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い ――禁じられた数字(下)――』光文社、2008年。

「さおだけ完結編」。

「会計」の概念を、会社における「科学的」な部分としてとらえ、ビジネスの全てを記述するものではないと言い切る。
ビジネスとは「非科学的」なものによって成り立っているとし、その上で「会計的な視点」の必要性を説く。
ビジネスでも生活でも、大切なことは「複数の視点を常に持つ」ことであるとし、「食い逃げされてもバイトは雇うな」というタイトルを上下巻に使ったことを説明する。

「費用か効果か」という二分法では、物事の本質はつかみきれない。
「こっちが立つと、そっちが立たない」という状況は、往々にして起こりうる。
しかし、ここで安易に物事を単純化することにより、「こっち」を選択し生まれる損失(金銭的なものだけではない)を回避することができなくなってしまう。
文中で使われる表現で、月並みだが響く言葉は「ギリギリまで考えろ」というもの。
また、「二分法を捨てる」「視点を大きく変える」ことが、考えることを支える。
その上で、利害が対立しているときに、どちらも解決に向かうような「妙手」を打つ。

数値で表せるものと、数値で表しきれないもの。
現実とは、そのどちらかだけではなく、両方が表裏一体となって私の前に立ち上がる。
物事を一面しか見ないということは、世界の一部分しかみていないということ。
「会計」を通じて、今を生き抜くシンプルな知恵を実感できたように思う。


おすすめ度:★★★★☆