2008年3月16日日曜日

マドルスルー muddle through

以前、梅田望夫『シリコンバレー精神』を取り上げたときに、「マドルスルー muddle through」という言葉を紹介した。
他でも使っているかと思い、ブログ内を検索したが、意外と使っていないことが分かった。
ここのところ、友人や同僚、上司、クライアントとのやりとりの中で使う機会があった言葉なので、きちんと内容を整理しておこうと思う。
http://iyokiyeha.blogspot.com/2007/06/2006.html
(2007年6月24日投稿分)

Iyokiyehaが「マドルスルー」という言葉に出会ったのは、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の放送である。
http://www.nhk.or.jp/professional/
(NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 公式Web)
「File:042 シリコンバレー疾風怒濤 技術者 渡辺誠一郎」の回で初めて耳にした言葉である。(以下、「」内は、茂木健一郎&NHK「プロフェッショナル」製作班編『プロフェッショナル仕事の流儀14』から引用)
この意味するところは、「本当ににっちもさっちもいかず、どこに出口があるのかわからない状況から抜け出す」という意味であるとのこと。
ブレイクスルー(break through)という、日本でもよく使われる言葉が、「多少停滞気味のときに、バーンといきなり次のレベルに量子的飛躍みたいなものを起こしてしまうようなこと」であるとしている。
どっちが上か下かもわからない、どこを目指せばいいのかわからない、とりあえず何をすればいいのかもよくわからない、光がどこにも見えないような状況を「泥 muddle」に例える。
「『ここで出口が見えなかったら、もう全員が討ち死にする』という超閉塞状況のプレッシャー」(「泥」)の中で、ブレイクスルーを求められるのが、マドルスルーであり、ブレイクスルーが出なければ終わりという状況である。

この言葉、元々はシリコンバレーで使われる言葉らしい。
人と同じことをしていても認められず、他の人とは違うことを考え、形にし、世に認められることを常に求められる風土のあるシリコンバレーにおいて、どうにもならないような状況から、知恵と行動をフル稼働させて一歩抜きん出る。
そのプロセスを表す言葉が「マドルスルー」であると整理できる。

先に挙げた、渡辺氏は、技術者として挑戦するためにシリコンバレーへ移住し、アイデアに投資してくれる人や会社を探したもののうまくいかず、独自の技術開発を始めるも資金のメドがつかず頓挫するなどの状況を経験する。
「ただ、悩んでいるだけの時間を、次の手立てを考える時間に使おう」と思い、回り道になろうが、行き止まりにぶつかろうが、必死にもがき続け、会社設立から3年経ちようやく高性能のチップを開発。
半導体で権威ある学会において、好評価を得て、ようやくシリコンバレーで認められた。

梅田氏もまた、エンジェルとして投資し育ててきたベンチャーが、9ヶ月の時を経てようやく資金調達に成功したそのプロセスに参加し、その経験を一言で「マドルスルー」であったとまとめている(『シリコンバレー精神』266ページ。)。

余談だが、半年以上も前の記憶がこんな形で思い出されて、思考を整理できるのは、このブログを初めて、いくばくかの思考の蓄積が記録されたからだと思う。
今後も、このブログを通して、見えるカタチ「可視化」にこだわっていきたい。