2008年3月2日日曜日

坂東眞理子『女性の品格 ――装いから生き方まで――』PHP新書、2006年。

総理府から、埼玉県副知事などを経て、女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)、現在は昭和女子大学学長の著者が、題名の通り「女性の品格」について語ることを通じ、女性だけに留まらない「品格ある生き方」について語る。
日常生活における、「常識」とか「マナー」と呼ばれるような、具体的な振る舞い方について表している部分と、それを超えた「生き方」について表している部分とがある。
「2007年最大のベストセラー」とされ、今回購入した書籍には帯に「280万部突破」と大きく書かれていた。
わかりやすい書き方と、日常ありがちな身近なことを扱っている箇所が多く、非常に参考になる。

個人的にいくつか感銘を受けた箇所はある。
「仲間だけで群れない」とか「時間を守る」といった具体的なことや、「グラス半分のワイン」(神よ、変えるべきものを変える勇気と、変えられぬものを受け入れる寛容さと、変えられるものか変えられぬものかを見極める知恵を与えたまえ、のくだり)、「愛されるより、愛する」、「倫理観」(Something Greatの存在)など、日常生活や自分の生き方を振り返るような内容もあった。

その中でも、最も考えさせられたのは、「ありがとう」という言葉である。
Iyokiyehaも気になっていることだが、日常生活の中で「ありがとう」と気持ちよく言う機会ってどれくらいあるだろう。

こんなことを思い出した。
院生の頃、課外活動によく参加するようになったのと同時期に、行動が「外向き」になり、いろんなお店を利用するようになった頃、いわゆる「いい店」と「どうでもいい店」とを分けるのが何かということを考えた。
その結果、やはり店員さんとのやりとりの内容だろう、という結論となった。
どんなお店でも、感じのいい店員さんがいると「いい店」として認識するし、店員さんとのちょっとした接点の中で、特に何も感じなければ「どうでもいい店」となる。
その時考えたことは「どうやったら自分の力で『いい店』を増やすことができるか」ということ。

結構な命題である。

「相手がどう」ということに焦点が当たっているのに、それを「私がどうするか」という問いに変えてしまったわけである。
当時、いかに空気の読めないポジティブ思考だったのかが分かるエピソードといえる。
その時出した答えは「感じのいい客になる」というもの。
シンプルだが、結構高いハードルだった。
この答えのキーとなるのが「ありがとう」の言葉。
行った店先で、その時の気分をいかに的確に表すか。
満足しているのであれば、その満足感を表すべきだが、1分と時間をかけられるわけではない。

一言で。

視線や表情、動作、全てに感情をこめた「ありがとう」は、それを受け取るレディネスがある人には、意外と伝わるものなのだなと今でも感じることがある。

一方で、日常生活の中で、そんな魔法の言葉「ありがとう」が、別の言葉にすり替わってしまうことがある。
「すみません」とか「ごめん」とか。
他人が落としたものを知らせて、拾ってあげたときに、その相手から聞かれる言葉が「すみませんでした」だけだと何だか寂しい。
思い切って「ありがとうございました」と言いたいものである。

こんなことを考えさせられた一冊だった。

おすすめ度:★★★★☆