2008年3月10日月曜日

JC-NET会議2008(3月9日)

会議二日目。
○実践発表分科会1『現場からの実践報告Ⅰ』
-仲町台センター
自閉症者の支援について、具体的な事例報告。
「ジョブコーチのしごと」を、『その人に“合った”仕事を、選ぶ・探す・教える手伝いをする』と端的に示したあたり、非常に印象的だった。
いかに「事業所ニーズ」に応じた支援をするか。
就職とは、「○○ができる」ことが課題になるわけではなく、あくまで事業所のニーズに求職者が合わせられるかどうかにかかっている。
手順書の作成も、ルール作りも、あくまで本人が会社でうまくやっていくために、作成される。

-ティーダ&チムチム
(ていだ=「太陽」、ちむ=「心」の意)
精神障害者の就職事例報告。
忙しくなると、仕事が遅い自分を「邪魔?」と不安になるなどの特性あり。
ジョブコーチ支援は、不安解消のための「声かけ」と「アイコンタクト」によるフォローが主な内容となっていた。
多いときには、4回/日くらいの電話連絡があったとのこと。
インタビューの映像も流され、そこで「電話で話せたことが、気持ちの切り替えになった」等の発言が見られた。
支援の内容や、電話対応で気をつけたことなどを質問したかったが、機会がなかったのが残念。
調子を崩して三週間休んだ時、休んだ期間とその前(働けていた時)とを比較し、「やはり、働いていた方がいい」と納得させるなどの手法は、おそらく私が意図しているあたりと同じものを援用しているものと考えられる。
同じ職場に、同じ病気を持ちながら10年、20年と働いている障害者がいることを紹介しながら、「そういう人と同じように働けるようになりたい」という意思表示が見られたことを取り上げ、ナチュラルサポートの概念拡大(ナチュラルサポート=健常の従業員、と思ってしまいがちだが、障害を持った従業員をも含まれて当然)について紹介された。

-油山病院(精神科デイケア)
病院デイケアにおける、就労支援の取り組みの事例報告。
10年以上かけて、スポーツ活動、SST、心理教育、健康教室など、職業リハビリテーションに段階的に取り組み、現在は「心理教育・健康教室・SST」の三本柱となっているとのこと。
肥満傾向のある人は、体重変化と気分の変化とが連動することもあるため「健康教室」が柱となっているとのこと。
発表者の印象も含め紹介されたのは、以下の通り。
・就職活動をする人の70%くらいは、障害の開示・非開示を問わず、何らかの形で就職している。
・障害を開示しても難しい人はいる。
・障害を非開示にすると、服薬を自己判断(周囲が気になる、など)により中断し、体調を崩すことが多い。
・JC的な支援は、他機関の支援に加え、デイケアのPSWが実施。

-花王ピオニー
花王株式会社の特例子会社として立ち上がった「花王ピオニー株式会社」の事例紹介。
花王製品のサンプルや試供品の箱詰めや梱包作業が主な職務となる。
知的障害者の雇用が中心で、現在18人が雇用されている。
雇い入れ時に、どんな支援制度を活用したのか、ということについて質問できなかったのが、残念である。
ピオニーの社長による事例発表だったが、雇用前に懸念していたこと(作業スピードがあまり速くない、ロッカー室を他の従業員と同じでもいいか、食堂の利用など)は、意外にも簡単に払拭されたなど、事業所環境の良さが実績に現れているように思えた。
「仕事は、個人能力の最大化を目指す」というポイントが印象的だった。
確か、メンタルヘルスマネジメントの勉強をしたときにも出てきたし、障害者雇用の場面において本人支援の究極目的はこの点に置かれるべきだと思う。

-ビック・ハートの就業支援
千葉の障害者就業・生活支援センターの事例報告。
多機能型の作業所(就労移行支援20人、就労継続B型10人)と支援センターとで就労支援を実施している。
後日、先方と連絡をとって、資料提供を申し入れるつもりであるが、利用者アセスメントに独自のツールを開発して実施している。
利用者の職業能力について、ワークサンプル法のような手法を用いて、見事な所見が示されていた。
また、先駆的な動きと連動して「障害者就業・生活支援センターのあり方」について議論を重ねてきており、その成果物が近いうちに発行される予定であるとのこと。
昼休みのポスターセッションに、アセスメントのツールを展示・紹介していたが、本当によく出来ていた。
いよいよ、地域センターの業務の根っこに触れてきている感覚を味わい、いい意味での刺激をもらったように思う。

○シンポジウム『働く障害のある人を地域でどう支える』
沖縄:ティーダ&チムチム、埼玉(東松山):東松山障害者就労支援センター、東京:WEL’S TOKYO、それぞれの事業展開とネットワーク構築に関するシンポジウム。
障害者就業・生活支援センターの事業報告を通して、地域に応じた支援センター事業の展開と今後の展望について考察する。

-沖縄:社会資源も限定され、事業所も少ないところで、どうネットワークを構築するか
精神障害者の支援が割合としては多いが、就労支援・生活支援いずれも、医療機関をいかに巻き込んでいくかがポイント。
「どうにかしてあげようとしない勇気」や「どうにもならないことを経験させ、フィードバックする。他機関の力をかりる」ことも必要。
ネットワークは本人が教えてくれる(本人の行動範囲を見ていれば、作りやすい)。
フットワーク(足でかせぐ)、ネットワーク(顔が見える関係)、チームワーク(同じ方向を見る関係)、「ソーシャルウォーカー」なる造語も飛び出す。
「ありがとう、ごめんなさい、お願いします」は常に必要。
社会適応訓練事業の実施にあたり、事業目的も大切だが、それ以上に「地域とつながっている感覚を得ること」が大きい。

-埼玉:生活支援はある程度充実している地域で、就労支援にどう特化していくか
・ニーズがあるから「形」を作る(「その人ありき」という考え方)
・作る形は「箱」ではなく「システム」(費用対効果も常に念頭において)
・自主事業の展開が、新たな公的事業を提案する
・就労支援への「こだわり」
話を聞けば聞くほど、古巣に類似した活動を展開してきたように思う。
短時間でものすごい情報量が含まれた報告のように感じたが、おそらく事業構造そのものがやや単純化しにくいものではないかと察する。
ビジョンとして示されたことも興味ぶかい。
・多様な就労支援ニーズに対応するセンターを目指す
 (障害者、企業、地域を支える)
・社会に貢献できるセンターを目指す
 (センターという「ブランド」の構築)
・就労支援ネットワークの拠点となり、地域資源の育成に努める
 (キーワードは「就労支援」)

-東京:就労支援機関も、その機能も充実している地域でのとりくみ
企業への提案型雇用支援も展開している。
ハローワークとの接点も強く、ハローワークからも連携依頼が届くような関係となっている。
「WEL’S-NET」という、求人・企業実習の情報提供手段により、様々な機関(現在27団体)と情報共有を実施している。
各機関の持つネットワークを、有機的につなげていく試みといえる。
「ネットワークは、みんながハッピーになる」。
全国どこにでもある機関が中心となり、ネットワークで就労支援を展開する。
その土地の事情をプラスする、という感覚で「TOKYO STYLE」を紹介された。

-まとめ
以上の事例報告を通して、障害者就業・生活支援センターの特徴を4点から説明する。
1)地域のクッションとしての役割がある
2)雇用している人(メモが途切れている…)
3)地域の事情により、事業展開や手法は様々である
4)地域の就労支援の業界では、誰にも負けない人脈を持っている
以前より、JC-NETでは「スピリット」と「方法論」「技術」が必要であると説いているが、「社会貢献」「みんながハッピーに」といったスピリットが土台となり、「事業展開」や「支援手法」といった方法論・技術がそれに加わり、初めてその土地で実のある事業展開が可能となる。