2008年3月23日日曜日

矢野龍彦、金田信夫、長谷川智、古谷一郎『ナンバの身体論 ――身体が喜ぶ動きを探求する――』光文社、2004年。

できるだけ「捻らない」「うねらない」「踏ん張らない」身体動作を「ナンバ(難場)」と呼び、副題にあるように「身体が喜ぶ動き」探求過程の記録。

例えば、歩くときに右手・左足、左手・右足を交互に前に出すと、直立すれば平行となる肩と腰のラインに、ねじれを生む。
身体がねじれている一瞬は、次の動作に移ることのできない「居付き」が生じる。
また、歩行や走行についても、前に出した足がブレーキとなってしまうため、運動によって生じるロスが大きくなる。
これが、「捻り」「うねり」「踏ん張り」である。
これらをいかに少なくするか。
究極のところでは、どう排除するか、という問いが立つ。
身体による捻りやうねり、ブレーキがなくなれば、無駄なくもっと素早く動作することができる。

この「ナンバ」の動作を、桐朋高校のバスケットボール部で取り入れて指導した記録を中心に、具体的にどんなイメージで動作するのか、豊富な練習方法が写真になって掲載されている。
足の上に、骨盤、胸郭とあるが、それぞれを「ボックス」と捉え、それをつぶすことによって「身体が喜ぶ動き」を可能にする。
関節の稼動域が広がり、全身が動作するため、結果として素早い動きとなったり、より強い力を生み出すことができる。

著者は、マニュアルではなく「自分の身体との対話」を重要視しており、身体動作だけでなく「発想の広がり」といった知的な営みにも「ナンバ」を応用可能としている。
身体動作の無理や無駄を考え、改善していく発想は、そのまま自分に起こっている「無理や無駄」に気づきを与え、それを改善する発想へとつながっていくという。
私も、普段この本に掲載されている写真を教科書として身体を動かしているが、毎日身体と対話することにより、自分の身体の変化・変調に敏感になったように思う。

身体動作は、「ナンバ」が古武術の動作を参考としているため、合気道の動作とつながるところもあり、非常に参考となる。

http://www.ningenkougaku.jp/index.html
(人間考学研究所 Web)


おすすめ度:★★★★☆