2009年12月17日木曜日

専門第二期研修(2日目)091214

○障害者雇用に向けての事業主業務に関連する法律等

0.はじめに
・社会保険労務士とは
 =会社の「人」に関することをする役割
  保険や人事、雇用契約など
  トラブル対応(対組合、対個人、など)
・労働基準法(労基法)
 =刑法と同じ位置づけで、基準が定められ罰則もある。
  労働者災害補償保険法も同様(窓口は労働基準監督署)
・労働契約法(契約法)
 =民法と同じ位置づけで、具体的なことは、裁判などで決める。
  相談の窓口は、労働問題に詳しい弁護士や社労士。

1.採用
 労基法15条
  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない。
 契約法4条
  労働契約の内容の理解の促進
・文書で明示すべき項目
(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
(3)始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
(4)賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締め切り及び支払いの時期に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む)
・口頭でも可能
(6)昇給に関する事項
・就業規則等で決まっていれば明示する
(7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
(8)臨時に支払われる賃金、賞与および最低賃金金額に関する事項
(9)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(10)安全および衛生に関する事項
(11)職業訓練に関する事項
(12)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(13)表彰および制裁に関する事項
(14)休職に関する事項
*昇給・退職金・賞与の有無(「パートタイム労働法」=短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
*上記を変更する場合
 -1~2ヶ月の短縮、等であれば、そのままの契約で構わない
 -長期間継続するようであれば、契約を変更する

会社は、面接時に最も裁量権を有する(労基法に縛られていない)
・(軽)犯罪歴がある
・障害がある
ことを伝えるべきか否か。
「経歴詐称」との兼ね合いだが、「経歴詐称」により事業所は懲戒権を有する。
(よって、線引きは非常に難しい。個人のかかわりだけで悩まないこと!)

契約期間は、労基法14条によって定められている。
・期間の定めのないものをのぞき、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、以下の各号に該当するものを除き3年を超えて締結してはならない。(以下は5年まで)
(1)高度な専門的知識を有する
 ⅰ.博士の学位を有する者
 ⅱ.国家資格を有する者
 ⅲ.システムアナリスト・アクチュアリー試験合格者など
 ⅳ.満60歳以上の者

会社は、従業員の「解雇」を避けたい!
理由:
(1)各種助成金の対象ではなくなる
(2)正当な解雇であることの証明をしなくてはならない
(雇い止めの場合、契約更新の条件を明示しておくべき)
(3)予告手当(30日分の賃金)の支払い
労基法「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」(略)
*ハローワークの扱いは期間によって異なる
 3年以上勤務しているのであれば、事業所都合 
 3年以下の勤務であれば、期間満了
として処理

2.労働時間・休憩・休日・休暇
 原則:8時間/日、40時間/週 休憩時間はこれに含まない、休日は毎週1回以上
 (労基法34、35)
 例外:一ヶ月単位、一年単位、フレックスで勤務時間の調整は可能。
(略)

3.賃金
 労基法24、27、28(最低賃金:最賃法7)、37(割り増し)
(1)賃金支払い5原則
 ⅰ 通貨払い(例外:銀行振り込み)
 ⅱ 直接払い(例外:やむをえない場合に家族に支払う。だから本人名義の口座が必要)
 ⅲ 全額払い(税金や社会保険料は別)
 ⅳ 毎月最低1回払い
 ⅴ 一定期日払い(毎月、同じ日)
 出来高払制その他請負制の場合、労働時間に応じて一定額の賃金保障が義務付けられている
(2)割増賃金
 ⅰ 法廷時間外労働(8時間/日以上)=125%
 ⅱ 深夜労働(22:00~5:00)=125%
 ⅲ 法定休日労働=135%
 (「法定」=労基法上の基準、「所定」=会社ごとの定め)
 *家族にかかる手当ては除外されるが、本人にかかる手当て(資格手当など)は割増の対象となる
(3)最低賃金
・最低賃金の減額特例(以前の「最低賃金除外申請」)
 生産性との兼ね合いで賃金設定する

4.解雇
 契約法16
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
 労基法89(手続きのみ)
「解雇の場合には、就業規則に解雇事由を記載する事が必要」
・就業規則に載せられていることが重要。
・解雇の有効・無効に関する条件。
・かつ、従業員に周知していること。
(絶対的必要記載事項)
(1)始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに交代制の場合には就業時間転換に関する事項
(2)賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締め切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
(3)退職に関する事項(退職の事由とその手続き、解雇の事由等)
 解雇-普通解雇(事業所都合)「雇用を継続すると、事業所として都合が悪い」
   -懲戒解雇(本人責任)「お前が悪い」(犯罪や、事業所としての我慢の度合い)
(相対的必要記載事項)
 略

解雇できない場合
(1)労働者の国籍、信条、社会的身分を理由としてなされた解雇(労基法3)
(2)労働者が業務上の怪我や病気にかかり、療養のために休業する期間とその後30日間になされた解雇(労基法19)
(3)産前産後の女性労働者が労基法65条の規定により休業する期間(産前6週間、産後30日)(労基法19条)
(4)労働者が、事業場が法令に違反している事実を労働基準監督署に申告したことを理由としてなされた解雇(労基法104)
(5)労働組合員であるきおとを理由とする解雇(労組法7)
(6)労働者が育児・介護休業の申し出をしたこと、又は育児・介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法10,16)
(7)女性労働者が婚姻・妊娠・出産・産前産後休業をしたことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法6)
(8)労働者が、都道府県労働局長に対し、個別的な労使間のトラブルについて援助を求めたことを理由とする解雇(個別労働紛争解決法4)

事務手続き(労基法20)
 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。


5.「働く」とは
(1)休職の考え方
「労働契約の関係」とは「労働者が使用者の指揮命令下で労働し」「使用者から賃金を得る」関係
「休職」は、法律上の条文はない。(例外「公務員法」?)厚労省のガイドラインのみ。
よって、例えば、診断書が出た時点で、そのことが解雇理由となりうる。復職を制度として整備している事業所は、新規雇い入れよりも諸々の状況から休職者を復職させた方が有利と考える場合。ただし、近年では「事業所の責任」を問われることも多いため、診断書提出即解雇とはなりにくい。

・安全配慮義務
 ⅰ 事故にあわない(危険性)
 ⅱ 健康で働ける環境(健康配慮義務、ともいわれる)

極論すれば、労働者が「働けない」のであれば、労働契約にならない。
就業規則に休職の規定がないと、休職できない。

(2)「休職」とは
 労働者が労働することを、使用者が「しばらく免除する」こと。
 「解雇猶予措置」という考え方が主流。
・うつ病(ならば)が、それが労災の対象となるか否かで、事業所としての責任の範囲が変わってくる。
 休職期間満了時に、解雇であるか、自然退職(解雇ではなく、「退職」と同じ扱いとなる)となるか、就業規則により判断。
(労基法81、労災法19、契約法5)
・労災認定のライン
 発症前1ヶ月におおむね100時間または発症前2ヶ月ないし6ヶ月にわたって、1ヶ月に80時間を越える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連が強いと評価できる。

(3)休職時の対応
ⅰ 休職した従業員が何をもって「ゴール」としているか確認
 (「うつ病を治す」ことで合意が得られているか?「お金がない」「世間体」は復職とは別の次元。事業所の状況を配慮する)
ⅱ 精神疾患の発症が業務上か否かを考える
  事業所の本音は「労災にしたくない」
  感情的なもつれは避け、労災は労災として考える
ⅲ 精神疾患にかかっていることは「働けない」ことと=(イコール)ではない!
  疾病性と事例性の違いを把握する
  ただし、うつ病になったのに働かせた、ということにならないよう注意(安全配慮義務)
ⅳ 就業規則に休職規定があるか
ⅴ 職場復帰の決定の仕方
  診断書を参考に職場復帰を決定するが、復帰させるかどうかは会社の人事権
  (↑重要だけれども、すべてではない)
ⅵ 退職の場合の取り扱い
  解雇なのか自然退職なのか(後者であれば、退職金など、会社の規定によって決定する)
ⅶ 休職と社会保険の関係
 ①休職期間中の所得保障は原則として、健康保険の傷病手当金(標準報酬月額の2/3、最大1年6ヶ月)
  ただし、就業規則により会社から給与の支払いがある場合は、給与の支払いが優先される。
  ※1年6ヶ月は「もらい始め」から。途中で復帰した期間は、この期間に合算される。
 ②休職期間中の健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は通常とおり控除される。
  会社と従業員で折半(多くは会社が立て替えている)

(4)復職が認められる治癒の考え方
 医学的治癒と、人事労務上の治癒は違う
 参考:以前は「従前の職務を通常の程度行える」程度であったが、最近の傾向としては、「直ちに従前の業務に復帰できない場合でも、比較的短期間で復帰可能な場合には、短期間の復帰準備時間の提供などが信義則上求められ、このような信義則上の手続きをとらずに解雇することはできない。

6.判断基準
 (事例略)
(1)リハビリの考え方
・リハビリ出勤=通勤のみ等、職場で業務には従事しない。給料もない。
・リハビリ勤務=緩和勤務、作業あり。給料をどのように設定するか。
「リハビリ」の考え方は、法律の定めがないため、ケース毎に合意をとる。

(2)管理職や専門職の場合
正社員であれば、基本的には「他の正社員職(事務職、など)」で復帰ができれば、復帰できるという判断にすべきという判決はある。必ずしも従前と同じ職務は求められない。





○職業カウンセリング演習
0.はじめに
 EAP=Employ Assistant Program
     相談専門機関。保険会社が主導することが多い(早くリハビリして職場復帰させた方が、支払う保険料が少なくてすむ)
     現場で難しいのは、退職が絡んだ相談
 GLTD?=長期にわたり、所得保障するプラン


1.NIOSH職業性ストレスモデル
 EAP実践における(メンタルヘルスの状況把握と改善における)基礎・原点となるモデル。

http://www.ne.jp/asahi/amano/matsuo/oh/14jobstress/stressmodel.htm
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2688dir/n2688_06.htm
(図はこのあたりを参照)
アセスメントはこの5つの視点から。
・職場アセスメント:ストレッサー評価
・個人アセスメント:個人の性格など
・疾患アセスメント:ストレス反応など
・緩衝アセスメント:Social Support
・家族アセスメント:協力体制など


「職場のストレッサー」だけで、「疾病」に至るわけではない。
同じ状況(職場のストレッサー)であっても、それを受け止める「個人的要因」や、家族など「仕事以外の要因」、これにSocial Supportとされる「緩衝要因」が相互に関わりあう。
この状況下で、ストレッサーに耐え切れなくなると「ストレス反応」を生じ、疾病へと至る。
モデル内の「疾病」を除いた5つの項目は、その人の状況を把握することや、改善の方法を検討する上で有用といえる。
また、改善の方法を検討する上で、多くの場合、職場のストレッサーは大きな変化を見込めない。緩衝要因をいかに高めるかが重要となることが多い。
DCSモデルといい、高Demand、低Control、低Supportの状況下におかれるとキツイ。

Q:職業カウンセリングと産業カウンセリングの違いは?


2.メンタルヘルスの問題把握に必要な二つの視点
(1)疾病性
 その人の疾病自体の重症度レベル
(2)事例性(産業臨床や職リハの対象はこちら)
 職場でどの程度問題となっているかのレベル
例:本人の不適応行動が職場のルールや風土に触れてくると、事例性のレベルは上がる

■Question
状況を説明できるケースは簡単なケース。困難ケースとは「状況を説明できない」ケース。
「現代型うつ」への対応には、治療とは別の「育成」の視点が必要ではないか?
※以前は地域社会や、宗教上の教会やモスクにおける「育成」の価値そのものが失われつつある。
 新しい価値を生み出すのが「Social Action」。

3.EAPサービス
・定義:
(1)職場組織が、生産性に関連する諸問題に着手すること
(2)従業員であるクライアントが、職務上のパフォーマンスに影響を与えうる個人的問題に気づき、解決をすること
以上2点を援助するために作られた、職域におけるプログラム。
・サービス概要
(1)問題の確認・アセスメント・リファー
(2)危機介入
(3)短期問題解決
(4)モニターとフォローアップ
(5)組織リーダーへのトレーニング
(6)組織リーダーへのコンサルテーション
(7)組織に関するコンサルティング
(8)プログラムの推進と教育
・留意点
 EAPにおいては、疾病性は扱わず、パフォーマンスに関わるサポートを実施する。
 事例性を扱うのがEAPであり、産業臨床全般のスタンス。
 自分自身で活かせないから、専門家が必要ですね、という文脈。
・連携における重要点:特に管理部門への関わり。
 マネジメントコンサルテーション=情報のフィードバック、アカウンタビリティ =就業規則の確認は大前提
 (組織・就業規則の「理解」→理解したものを「説明」可能にする→具体的な「対応」→手柄は人事や管理職に「フィードバック」)
 わかりやすく噛み砕き、現状を「わかりやすく説明」する
 その上で「どうしたいの?」と問うことと、カウンセラーとして「○○と思う」という意見を述べる
※即対応を考えるのではなく、状況把握とその伝達に努める。

■One of Answer
 相手が変わらない状況というのは、カウンセラーにとって徒労感が強い。
 それであっても、クライアントの目の前に「いる」のが、カウンセラーたるゆえん。


4.カウンセラーが目指すもの
 専門サービスが目指す究極的な目標は「いなくてもいる」こと。
 実際のサービスがなくなっても、顧客組織やクライアントにサービスが「内在化」されること。
内在化のために必要なこと:
(1)現象をわかりやすく整理・説明する
(2)顧客企業に伝えていく
※困難な事態を外部に丸投げで専門的に解決していくことでは、専門サービスへの依存性が高まるだけで、問題は低減しない
 当初は外的存在として活用され、中期にカウンセラーの言動を組織・クライアントが取り込んで内在化し、最後に再び外的存在として活用されなくても良い状態となり役割を終える 
・カウンセラーが活躍しすぎない=当事者にできることは、積極的に「任せる」=ソーシャルサポートへ育っていく(⇔イネイブリング)
・コンストラクティブ・コンフロンテーション
 (資料参照)
 問題→指摘→反省→改善
   →問題継続→改善目標の明確化(本人の入る余地を残す)→自己努力→改善
   →問題継続→問題の客観的情報を集める→本人に伝える(直面化)→一定期間内で自己改善を指示→改善がない場合、関わりの手を引く→改善
・ナラティブアプローチ
 自らの経験を語り、自らの物語を組み立てること。
 自分に異質なものを取り込むには、語ることが最も効果的
 経験を語ることの成功が、人生と経験に連続感と意味を与える

5.ディスカッションから
・理解なくして、対応なし
 (状況を必ず把握する)
・困難ケースへの対応
 (上司の意向で復職支援を実施する場合、例えば打ち合わせの場で「○○がだめだったら、△△してください」などの交渉は欠かせない。
 対応に明確な答えはない。
・コンストラクティブ・コンフロンテーション
 まず、本人の意向に沿ってやってみて、「駄目だったらどうしますか?」という文脈で対応する。
 -客観情報を集める
 -直面化
 やってみてできない場合に、自分の力では無理だったということ→「専門機関の力をかりましょう」と機関へつないでいく
 コンストラクティブ・コンフロンテーションをそのまま適用すると、臨床的には本人が満足しないこともある。
 「これだったら、できると思う」を本人から引き出すことも必要。
 無理難題を課せられ、対応が変わらないようであれば「関わりの手を引く」ことを見せる。
 (ポイントは「私」としてやる)
・復職とは・・・
 フルタイム勤務ができること!