2007年7月31日火曜日

小田晋、作田明『心の病の現在3 うつ病 統合失調症』新書館、2006年。

200ページそこそこで、うつ病(気分障害)、統合失調症、人格障害・行為障害の概要が把握できる良著。入門書としては、少し難しいようにも思えるが、その分、基礎的な内容に加え、最新情報や著者の解釈などについて踏み込んで論じられている。読み応えがある。
複数の疾患について、一冊でまとめられているため、DSM-4によるそれぞれの疾患の連続性についても取り上げられている。例えば、境界性人格障害-分裂病型人格障害-統合失調症といったものである。

内容の中で印象的だったのは、「分裂病における内包の縮小と外延の拡大」といった表現である。病は希釈されて社会に流れ出しており、以前のような爆発するような表出の仕方はごくまれになったが、いわゆるその予備軍のような病を持つ人が、形を変えて社会生活を営んでいるといったことを表した表現と読み取る。

「昔はよかった」なんて、言うつもりは毛頭ないし、そう言えるほど生きていない。ただ、現代社会はそのような希釈された病を内包しながらも、それを許容していないようにも思える。それは、コンプレックスを抱えながら、それを見てみぬふりをしながら生きている私達を象徴しているようにも思えてしまう。