2022年9月20日火曜日

定野司『マンガでわかる!自治体予算のリアル』学陽書房、2019年。

 少し前に紹介した『はじめての自治体会計0からBOOK』と併せて、今年度の異動に伴い読んでみた一冊です。マンガで事例が紹介され、それに解説が入るという構成。予算とか会計とか、数字や字面を追わなきゃいけないことですが、言葉になじみがない自分に合わせて入門書を選んでみました。

 率直に、読み物として面白いかと問われたら、派手さはないし、地味だし、ドラマのようなわかりやすい二項対立の表面化、みたいな話ではないので、面白いとはいいきれません。ただ、自治体の予算は、金額の多寡はさておき、本著にとりあげられているような、住民の生活と隣り合わせの、当たり前の、どこにでもある、地味なことの積み重ねでなりたっているわけで、本著の狙いは現場のど真ん中、とも言えるでしょう。こういう視点(つまり入庁して予算から身をひいていた、長年さぼっていた私の視点)で読めば、じわりじわりとしみこんでくる内容で、予算の原則(財政担当課の立場)と担当課の立ち位置などは大変よく表現されていると思います。

 私の仕事で言えば、ここ3ヶ月ほど歳出ばかり気にしていましたが、歳入あっての歳出であって、この視点をフォローできたのはこの読書のとりあえずの成果です。ただ、使い方の意味や補助金設計によって伝わる(伝わってしまう)メッセージといった、自治体財政の常識、的なことまで触れている内容なので、予算編成前にもう一度読んでおきたい本でした。

 ただ、時間を戻せるのであれば、入庁初年度くらいに一度読んでおきたい本だったな、と反省を込めて、でも良書に出会えたのは収穫です。