2022年9月6日火曜日

中村朱美『売り上げを減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』ライツ社、Audiobook版。

 これはいい意味で期待を裏切った一冊だった。題名のインパクトに惹きつけられて聴いてみた一冊だったのだけれども、「佰食屋」(ひゃくしょくしゃ)という名称(漢字)にも表れているように、売り上げを基に考える経営から、人を基に考える経営へのシフトチェンジを描く飲食店の奮闘劇といえる。

 ローストビーフ丼をキラーコンテンツとして扱う飲食店が、販売量を制限するという発想と取り組みによって、働きやすさと管理された利益を出し続けるというビジネスモデルを提示する。売れるものを「売り続ける」のではなく、無理ない目標数を「売り切る」ことを標準とすることによって、他の目標への取り組みを強調できる。知恵を絞ることができる。

 ちょうどバスケットボールのピボットみたいに、ある点を固定すると他の部分が動くようになるイメージが浮かんだ。固定することができないと思い込んでいる「売り上げ」を敢えて固定(一定数を「売り切る」ようにする)ことで、思いもよらなかった成果(昼営業だけで事業が成立する)が生まれる。「働き方改革」と手探りで各社が取り組んでいることを、一足飛びで超えていく感じがした。その発想として「売り上げを固定」しているわけだ。

 どの業種、どの仕事にも「売り上げ固定」を当てはまるということを学んだのではなく、「何かを固定することで、自由になる何かがある」ことと「操作できないと思い込んでいることがある」ことを学んだ一冊だった。