2022年9月20日火曜日

齊藤飛鳥『子ども食堂 かみふうせん』国土社、2018年。

 個人的に「子ども食堂」に対しては、なんとも言えない魅力を感じており、老後の視野の隅に入っていたりする。カミさんには反対されるだろうけど。あこがれから手を出した、というわけではないのだけれども、最近、いわゆる「児童文学」っぽい読み物も気楽に読むようになったので、あの「国土社」さんの出版物(以前、『月刊社会教育』を取り扱っていた出版社)ということや、Amazonセールであと1,000円くらい買いたかったことなど、いくつかの偶然が重なって手に取った一冊。

 八百屋のおかみさん「あーさん」が月2回ではじめてみた子ども食堂「かみふうせん」と、そこに集まる子ども達の物語。両親が突然出て行ってしまった女の子、芸能活動をする妹を持つ男の子、テーブルトークゲームが好きな家族の一人で自称「地味」な女の子、レストランを経営する一家の男の子。みんながちょっとした生きづらさを抱えていて、「かみふうせん」にくることで、生き方の選択肢が増えた、というシンプルな短編集。シンプルでわかりやすい。

 制度面の大人の理屈ではなく、子どもの課題解決事例とも言い難い物語。フィクションなのだろうけど、巻末に参考資料など掲載しているあたり、著者は丁寧に取材しているか、子ども食道の運営に関わっておられるのだろう。特別な物語のように見えて、おそらくこんな事例はあったのだと推察される。見方によっては重大な事件にも見えるし、本人にとっては生活そのもの。事実は小説よりも奇なり Truth is stranger than fiction.と言われますが、まさに、そういうことかもしれない。読み物と見せて、実は身近によくあることなのかもしれない、なんて思いながら読みました。

 とはいえ、こんな風にあーだこーだと考えるのも大人の発想かもしれません。読んでちょっとほっとする、派手なハッピーエンドじゃなくて、地味な一歩前進のお話なんだけれども、こころを暖めたい時にパラパラっと読みたい一冊です。

■引用

80 強いやつと戦う勇気がないのをごまかし、弱いやつをつぶして自分をなぐさめているだけの、絵に描いたような負け犬が、このおれだからだ。