2022年9月24日土曜日

森島いずみ『ずっと見つめていた』偕成社、2020年。

 図書館シリーズ。ティーンズ向け小説。新刊の棚に並んでいて、装丁が素敵で手に取った一冊。

 妹の化学物質過敏症候群を理由に、埼玉県浦和市から山梨県南アルプス市に転居した一家を描く作品。自然の恵みや人情ばかりでなく、地方のよそ者扱いや都会へのあこがれなども描かれている。小説ではあるが、派手ではなくむしろ普通のありふれた日常を描いており、淡々と心温まる内容になっている。

 浦和のマンションを売って、母親の夢だった地方で食堂を開店する。素晴らしい材料を母親が料理の腕をふるうのだが、地元の親玉のようなおじいさんが「よそ者め!」と言って回るので、近所の他の人もお店を使いづらくなっていく。近所づきあいも少しギクシャクするのだけれども、ある事件がきっかけで・・・という、よくあるお話なのだけれども、一家の人柄がよかったり、近所の人たちも根がいい人達だから、きっかけでカチリと歯車が合えば、コロコロと事態は展開していく。読んでいて、穏やかなのに何かこころが暖まる、そんな読後感のある小説でした。

 願わくは、続編を読んでみたい。