2022年9月6日火曜日

喜多川泰『運転者 未来を変える過去からの使者』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年。(書籍版)

 相変わらず喜多川氏の小説。『君と会えたから…』を買った書店を再び訪ねたところ、同じ場所にこの本が陳列されていた。私はAmazonさんで購入したけれども、ちょっとしたご縁を感じた出来事でした。あらすじは省略ですが、私くらいの年齢(現在43歳)、30代~40代後半くらいの方におすすめです。宗教色がないので読みやすい。

 上機嫌でいること、運は貯めてから使えるようになる、運の総量は現世で消費しきれるわけではなく、自分の運も現世のやりとりに留まらない。即効性はなくとも、自ら運気を転ずる(良くする)ために必要な習慣を、小説のモチーフとして語るもの。

 様々な伏線が張られていて、随所でそれを回収しつつ、一方で触れるにとどまり謎のまま通り過ぎていくものもあり、行間で読ませるしかけもあったりと、読み物としても単純に明快で面白い。それでいて、言葉の使い方が巧みであるのも著者の小説の特徴といえるだろう。謎のままもやもやしながらも、このすがすがしい読後感は何だろうと思える一冊でした。

■以下、引用

58 「いつでもどこでも、明るく楽しくいることだ。いつでも、どんなときでもな」

65 運は〈いい〉か〈悪い〉で表現するものじゃないんですよ。〈使う〉〈貯める〉で表現するものなんです。だから先に〈貯める〉があって、ある程度貯まったら〈使う〉ができる。少し貯めてはすぐ使う人もいれば、大きく貯めてから大きく使う人もいる。そのあたりは人によって違いますけどね。どちらにしても周囲から〈運がいい〉と思われている人は、貯まったから使っただけです。

106 「なるほど、上機嫌でいるというのは、楽しいことを期待するのではなく、起こることを楽しむと決めるということなのかもな」

168 実際に今の自分がやった努力の成果が自分に対して表れるのは、普通の人が考えているよりもずっとあとになってからです。それこそ十年とか、場合によっては百年とか・・・