2008年9月15日月曜日

細谷功『地頭力を鍛える』東洋経済新報社、2007年。

雑誌『TOPPOINT』で、2008年の上半期でランキング上位に入っていた書籍。
現代を生き抜き、リードしていくための思考力を「地頭力」と名付け、「結論から」「全体から」「単純に」考えることを本質として説明している
さらに、この思考力は訓練によって鍛えることができるとし、そのための強力なツールとして「フェルミ推定」を取り上げる。
上記3つの思考力をそれぞれ「仮説思考力」「フレームワーク思考力」「抽象化思考力」とし、そのベースとなるものとして「論理的思考力」と「直観力」、そして全体の基盤となるものとしての「知的好奇心」を、本書で説明している。
課題へのアプローチに関して、その考え方の過程を通してそれぞれの力を説明しており、本書全体が「地頭力」に基づく論理構成(「結論から」「全体から」「単純に」)となっているのが、非常にわかりやすく、面白い。

個人的に、単純暗記物が苦手だったこともあり、従来の「知」のあり方とは違う方向へ自分の力を伸ばそうとしてきた経緯がある。
それがこの「地頭力」と完全に重なるわけではないこともわかったわけだけれども、地頭力のベースとなるもの(論理的思考、直観力、知的好奇心)は、少なくとも私が大切にしてきたものと大差ないことは確認できた。

さらに、論理的思考は、万人に理解されるためのものであり、「誰が見ても一貫してつながっている」ということがその特徴としてあげられる。
直観力が、自分の知識や経験を総動員して大胆な仮説を立てるための「攻め」のツールであるとするならば、論理的思考は万人に理解されるための「守り」のツールである。
どちらがいい、悪いではなく、両輪があって初めて地頭力を支えることができる。
もう一つ深めると、知的好奇心に関しても「問題解決に関する好奇心(Why型)」と「知識に対する好奇心(What型)」とに分類でき、前者は有益だが、後者は時に有害にもなりうるということが新鮮だった。

特に勉強になり、すぐにでも意識しなければならないこととして、「全体から」考える際の原則「もれなくダブりなく(MECE: Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)」という点と、この分類をうまく実施するために利用される「狭義のフレームワークツール」である(p.143-144)。

インターネットの普及によって、従来の「知的作業」とは異なる、次代を生き抜くための知恵を使う能力「地頭力」について、概要をわかりやすく説明した一冊。
おすすめです。


おすすめ度:★★★★★