2007年11月4日日曜日

デボラ・R・ベッカー他著、堀宏隆、他訳、大島巌、他監訳『精神障害をもつ人たちの ワーキングライフ』金剛出版、2004年。(6)69ページまで。

第6章
「IPSの概要」

IPSプログラムの概要について説明。就労支援に関するさまざまな段階で押さえておくべきポイントとして、アセスメント、必要な情報提供、就職活動ポイント、就職してからの支援など、要点がまとめられている。

○IPS……
1)IPSでは、
 就労=治療的なもの
   =ノーマライゼーションをもたらすこと
    (これらは、他の精神保健サービスと並行して同時に提供される)
   =治療・援助プロセスの不可欠な一部
2)IPSは、
 一般の地域社会で、精神障害のない人と一緒の職場で共に働くことが、
 (1)クライアントの生活の質を高め、
 (2)健康を増進させ
 (3)スティグマ(烙印・汚名・不名誉…、?)を軽減する
 という考え方を基にしている。
3)IPSは、
 「伝統的な評価・査定方法」をプロセスに含まない
  (標準化されたテスト、ワークサンプル、訓練、など)
 その代わり、
 (1)本人との会話の機会
 (2)(本人の許可を得て)家族や前の事業主から情報収集する機会
 (3)IPSチームの他のメンバーと相談する機会
 等、様々な情報源から、情報を得て、クライアントが仕事に就くのを助けるために、最善と思われるプランを作る。
 ※仕事を得るための最適なアセスメントと訓練は、「ともかく仕事に就くこと」
  =地域社会で通常の仕事の経験を積むことに基づいて行われる
   (「経験」から見える情報がある)
4)IPSには、
 失敗という認識がなく「すべての就労経験が肯定的に捉えられる」

○働くことと精神保健とは、相互に影響を与える関係にある
 働くことは、生活の秩序を取り戻すこと
 両分野の改善が、リハ効果を高める

○支援は、クライアントが「働き続けるため」に提供される
-医師は、クライアントが職場で働いている状況を基準に薬剤調整をする
-ケースマネージャーと心理臨床家は、職場での対人関係の難しさに対応するためにクライアントと話し合う
-就労支援スペシャリストは、事業主と連絡をとり、
 (1)通勤の手助け
 (2)仕事の進み具合を見直すために、仕事の後クライアントと会う
-就労支援スペシャリストと他のメンバーは、情報を頻繁に交換更新する

クライアントが就労を継続することにより、スタッフがそれを継続するために必要なものは何か、ということに取り組むようになる。