2007年11月25日日曜日

デボラ・R・ベッカー、ロバート・E・ドレイク著、堀宏隆、他訳、大島巌、他監訳『精神障害をもつ人たちの ワーキングライフ』金剛出版、2004年。(7)-3、102ページまで。

○スタッフの役割(続き)
<就労支援スペシャリスト>
・クライアントの技能と興味に合致した仕事をできる限り早く見つける手助けをし、必要に応じて継続して支援を提供する
(注:クライアントが働くべきであるか否か、働くことができるか否かを決めることではない)

1)目標
・就労時間の少なくとも65%は地域(事務所外)で過ごす
・採用後の一年間に、担当ケースの40%以上が少しの時間でも就労する(3~4ヶ月で)
2)資質
・精神疾患および物質使用障害について知識(精神疾患の症状、処方と副作用、対応方法など)を持っていなければならない
(1)統合失調症、分裂感情障害といった精神障害
(2)再発性大うつ病および双極性障害といった気分障害
(3)境界性人格障害などの重い人格障害
(4)強迫神経症やPTSD(外傷後ストレス障害)といった不安障害
(5)アルコール依存・物質乱用に関わる障害
※重い精神障害を持つ人たちにとって、働くことは病の症状に対処する戦略である
・望まれる資格・資質
(1)職場開拓、求職活動、職場の確保に総合的な知識と成功体験を持っていること
(2)地域の事業所と良好な関係を築ける能力を示せること
(3)広範囲にわたる職業に関する知識を活用できること
(4)クライアントの興味、ストレングス、技能、能力、対処法、本人固有のチャレンジ課題を認識し、それらを仕事と合致させる能力を有すること
(5)クライアントが仕事を維持できるよう支援するための長期にわたるサポート体制と就労環境を認識し、手配する能力を有していること
(6)診断、治療、処方および職務遂行に与える影響などの、重い精神疾患に関する知識を有していること
(7)障害者給付など社会保障に関する知識を有していること
(8)他のチームメンバー、事業主、家族に対しクライアントを効果的に支持・代弁する能力を有していること
※成熟しており、活発で、物事を前向きに考え、情熱的で、状況のよい面を見て目的を貫こうとする人、すなわち他の人が問題と考えることをチャレンジと受け止める人と言える

3)仕事の内容
・就労支援サービス「のみ」を提供する。
・ケースマネジメントのニーズが増大すると、就労に重点を置くことが難しくなる
・就労過程のあらゆる面に関与するジェネラリスト
(1)職業カウンセリング
(2)求職活動
(3)継続・同行支援 他
 全ての過程を、一人のスペシャリストが担当する
※段階的な手法に関する経験を有する場合、IPSの迅速な求職活動には馴染みにくい

○記録管理と成果の評価
・就労の成果を追跡し、スーパービジョンに使用することで、クライアントが一般就労を手に入れる手助けに集中できる
<一般雇用の定義>
(1)最低限、最低賃金を得ること
(2)就労現場には障害者ではない同僚が含まれること
(3)その職位は誰でもが保持できる職位であること、すなわち、その仕事は必ずしも障害者がその職位に就く必要がないものであること
(4)事業主の監督を受けること
・記録の内容は、最低限以下のものが含まれる
 -就労初日の日付
 -毎週の就労時間
 -終了日
 これらに加え
 -毎週の賃金に関する記録
 など、エクセルのワークシートを利用するのが集計しやすい
 この他、
 -クライアントの職業上の目的・目標を達成するための取り組み
 -過去の就労データをケース記録に毎月記載する
  (仕事を得た経緯、就労場所の名称、職種と職務内容、退職理由、
職業上のその人の長所、直面した困難など)