2019年1月12日土曜日

百田尚樹『永遠の0(ゼロ)』講談社文庫、2009年。(初版:太田出版、2006年。)

・第二次世界大戦の終戦直前に、神風特攻隊として戦死した宮部久蔵(みやべ・きゅうぞう)について調べる孫が主人公の小説。
・宮部久蔵を知る人からのインタビューを重ねる度に、浮き上がってくる宮部久蔵の人物像。その描き方は、推理小説と思わせるような面白さがある。
・同じ人物であっても、評価する立場や、評価する人の考え方、時期によって、その表現は全く異なるものになることを、登場人物の語りから教えられる。
・戦争に関する小説で、数年前に映画化されている。ドラマ化もされている。そのため、この小説の評価も様々なのだろうが、戦争論を除き、純粋に小説として読めば、大変面白い読み物であると思う。
・祖父が健太郎に語る場面が、私にとっては感動場面であった。
115ページ:国のために命を捨てるのは日本人だけではありません。我々は天皇陛下のためという大義名分がありました。しかし、アメリカは大統領のために命は捨てられないでしょう。では彼らは何のために戦ったのか-それは真に国のためだったということではないでしょうか。そして実は我々日本人もまた、天皇陛下のために命を懸けて戦ったのではありません。それはやはり愛国の精神なのです。
219ページ:一度の失敗が、すべてを終わらせてしまうのです。
314ページ:「墜とされてもまた戦場に復帰出来るということは、失敗を教訓に出来るということだ」
535ページ:私たちは熱狂的に死を受け入れたのではない。喜んで特攻攻撃に赴いたのではなかった。あの時ほど、真剣に家族と国のことを思ったことはなかった。あの時ほど、自分がなき後の、愛する者の行く末を考えたことはなかった。
(H31.1.8読了)