2019年1月12日土曜日

城山三郎『官僚たちの夏』新潮社、1980年。

・経済小説の開拓者と呼ばれた著者による、1960年代の通産省(現:経済産業省)の官僚たちを描く小説。
・10年くらい前にドラマ化されていた。
・ドラマもだが、小説はハッピーエンドではない、後味の悪さが印象的だった。ただし、一方で当時(現在にも通じるところがあるかもしれない)の実態を描き切っているのかもしれない。
・主人公の風越(かざこし)を中心とした、いわゆるモーレツ官僚を中心に描いているものの、後半は当時「新人類」と呼ばれていた玉木(たまき)や片山(かたやま)の生き方を肯定するかのような表現が目立つ。現在語られる「働き方改革」の内容にも通じるところが随所に感じられる。
・小説が発表されて40年近く経つが、職場というところは「変わらない」ものと「変わる」ものが混在するものであると、改めて感じさせられた。
181ページ「(前略)これからはひょっとしてああいうのが、役所向きでは」
332ページ「〈天下国家〉は生ま身の人間には重すぎる」
(H30.12.28読了)