2019年1月12日土曜日

森岡正博『生命学への招待 -バイオエシックスを越えて』勁草書房、1988年。

・30年前に上梓された書籍であることに驚く。
・生命をめぐる多元的な考えについて、生物・科学的視点と、哲学・道徳的視点とを区別し、主に後者で論じるものとして位置づけ、それぞれの積極的意義を見出すことを基本姿勢にする。
・「生かす」「生かされる」ことが両面であること。
・他者を生かし、そのことにより自分が生かされる。このエネルギーの流れみたいなものが「生きる」ことの本質。
・自分を「生かし」、他者によって自分が「生かされる」、よりよく「生きる」ことは「生ききる」ための学問として、生命学が位置づくことを示唆している。
・ただし、動的であり、知識(知恵)と行動とが関連し、常に型を変えていく。
・生命倫理学にかけているものを標的とし、上記を導く試みが本書の位置づけといえる。
・バイオエシックスのレビューから、化学とも自然とも異なる「生き方」を問う生命学。
・「発見」し続けること。本質は常に身を隠そうとする。
262ページ:私たちは生命圏と他者によって生かされ、その私たちが、今度は生命圏と他者を生かす。これこそ生命学の基礎に置くダイナミズム。

 生命学の定義も重要だが、生命学に至る思考の軌跡をなでるのが、哲学の学びと似ているので、大変刺激的である。言葉(日本語)で考えること、言葉そのものの意味をつかむこと、発する側としては言葉に意味を込めること、を読み取っていくことが、楽しくもあり、それ自体が学びとなっている実感がある。