2008年1月20日日曜日

デボラ・R・ベッカー、ロバート・E・ドレイク著、堀宏隆、他訳、大島巌、他監訳『精神障害をもつ人たちの ワーキングライフ』金剛出版、2004年。(10)、155ページまで。

第10章 求職活動
○基本姿勢
職業準備性よりも、クライアントの興味に応じた一般雇用への迅速な支援活動を促進する
「職業準備性」=福祉的就労、エンクレーブ、過渡的雇用、ボランティアなど、一般就労を目指し、就労前に参加することにより身に付くとされる能力。
「興味に応じた一般雇用」=競争的かつ恒久的な仕事
-クライアントのニーズが「ボランティアへの参加」のみであれば、就労支援スペシャリストは中心となって活動しない
-クライアントの準備性や就労モチベーションの低さがあれば、就労支援スペシャリストが改善させる
-就労支援スペシャリストは、クライアントと事業主との雇用のマッチングを成功させるのが主な役割

○IPSスタッフの心構え
基本:クライアントに対して抱く期待の大きさが、マッチングの成功を左右するといえる(本人の精神障害が、就労能力を限定するわけではない)。本人を信じ、長所を生かすことを考える。
※「ストレスや失敗から本人を守る」という名目で、精神保健スタッフが本人の不安を増幅させてしまうことがあり、それは報酬や学習を遅らせることになる
-「自分で選ぶ」ことによって、自信は向上する
-就労は、自己認知に変化をもたらす。それが他者との交流のやり方や、感情症状、および仕事ぶりに影響し、また、生活の中で行われる判断決定に変化をもたらす可能性もある。
☆働くこと自体が、今経験している困難を軽減するときもある
☆聴取していたニーズと異なる仕事をクライアントが探してきても、断るべきではない
 「そうすべき」or「そうすべきでない」は支援スタッフが指示しない
 中立的立場で、選択肢の利点・不利な点を比較検討し、クライアント自身が選択と経験から学ぶことができるようになる
☆短期間、または意に反する離職をした場合、その経験から「わかったこと」や「あった出来事」を確認し、「次にどう生かすか」を話し合う
・共通戦略:クライアント一人ひとりの理解と、クライアントの気持ちを敏感に感じ取る心を持ち、常に「本人のためになるか」と自分自身に問いかけること
※個人のもつ「興味」「能力」「機会」「教育」「運」により、どのようなキャリア形成がされ、どのように職業的発展をするのか
※時間の経過とともに、就労可能性や潜在能力が低下しがちであることを考慮に入れる。
 また、そのことに臨床家が加担していることもある

○求職活動
基本:人々に会い、話し合い、ネットワークを構築し、常にそれを深め、拡大する
1)事業主への初回の接触は「情報収集」を目的とする
2)労働条件のチェックのために、職場見学を願い出る
・事業主ははっきりしないことを嫌う
 危ないことには手を出さない傾向がある
 しかし、中身を知れば知るほど、就労支援スペシャリストを信用するようになる
・事業主が求職者に何を求めているか(能力、態度含む)、できる限り把握するよう努める
(仕事を見つける戦略)
1)新聞:求人情報の他に、地域の雇用状況について探る(新店舗開設など)
2)事業主へのコンタクト
3)雇用可能性に関する提案:生活を楽にして、事業を発展させる内容
4)個人ネットワーク:同じ生活圏で、仕事を作る・探す
5)精神保健機関におけるプレゼンテーション
6)ビジネスネットワーク:委員の仕事をボランティアで引き受ける、など
7)就職説明会
8)病院、役所:求人情報
9)Web:求人検索サイトなど
10)大学、私立学校
11)事業主に対する動機付け:補助金など
12)職場見学:依頼し、ニーズを把握しつつ仕事を探す
13)ボランティア:提案含む
(ADAにおける「合理的調整」の内容例 P.142より)
フレキシブルな勤務時間
  医療に係る予約や休暇のために勤務時間を調整すること
  無給の休み時間を使用すること
  パートタイム勤務ができること
  休憩時間を多くとること
労働スペースと仕事量の調整
  注意をそらさせるものや音を最小限にすること
  一人で作業するスペースを提供すること
  水/飲料を飲むことができること
  仕事量を徐々に増やすこと
  仕事量を調整すること
上司のフィードバックと肯定的なコメント
  上司がクライアントを支援する方法
  書面による指示の使用
現場でのサポート
  クライアントと同僚がペアを組んで仕事上の支援を得ること
  現場での一時的な職務指導(ジョブコーチ)
危機介入
  危機介入の手順
  就労支援スペシャリストへの電話連絡
  プライベートなスペース