2023年1月9日月曜日

濱野京子『空と大地に出会う夏』くもん出版、2022年。

 図書館シリーズ。いわゆるティーンズ小説。最近は、こういう軽い読み物をぱぁーっと読むのが楽しい。

 言葉でうまく説明できないことが苦手な小学校6年生の理一郎。「~かも」とか「多分~」とか、そういうことが苦手で、周りからも合理的と言われる。そんな(ちょっととっつきにくい)子が、何を考えているかわからない(ように見える)大智と、無駄が多い海空良と出会い、一緒に過ごすうちに、「言葉でうまく説明できないこと」が自分を変えていることに気づいていくお話。

 「楽しそう」にピアノを弾くとか、「気が向いたら」教えてもらうとか、これまで受け入れがたい、苦手な「言葉でうまく説明できないこと」が、自分の周りに、身近な人にもたくさんあって、他ならぬ自分も「うまく説明できないこと」のために母親と喧嘩してしまう。

 こうやって人は成長するのだな、ということを「うまく説明できないこと」を通じて描く小説。ティーンズ向けだろうけど、読ませる箇所がいくつもあって、ついつい没頭してしまった。小説っていいですね。

■以下、引用

7 ふわっとなんていわれても、理解できるわけがない。ぼくは言葉できちんと説明できないことがきらいなのだ。

115 言葉でうまく説明できないことに出会ってしまった。(大智と海空良とともに、鳥を見にいくと決めた直後。その自分の判断をふりかえって。)

124 おどろくことと、なにかいうことはべつ。(髪を短く刈り込んだ姉の姿を見た母の反応)

166 わからないのも、悪くない、と思った。わかる楽しみがふえるからだ。