2023年1月9日月曜日

古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講座』星海社、2012年。

 現役ライターの古賀氏が「文章を書くこと」を語った1冊。どうしたら伝わる文章になるのか、ということにこだわった内容となっている。「気持ち(ぐるぐる)を翻訳する」「リズムにこだわる」「見た目は大事」「立場を変える」「ハサミを入れる」という5つのテーマから、どうすれば人に伝わるか、どうすればもっと伝わるか、ということを具体例を盛り込んで説明している。

 伝わりやすさは100点の出ない相対的な概念で、文法的に正しいことや話す内容、とは異なる。もちろん、係り受けは大切で、正しい順序で文章ができていることは最低限のことであるが、それを文章として読者に読ませるとなると、これは伝える側の熱量だけでは説明できず、書き手のスキルが問われる。

 Iyokiyehaは行政職員なので、もちろん行政文書として誤読させない技術は必要なのだが、それとは重なりつつ少し立ち位置をずらし、読む人に「伝わる」書き方を入れ込む必要がある。理想的、究極的には相手その人(の理解力)によって書き方は変わる。しかし、そこまは現実的でなくとも、想定する対象にきちんと伝わる書き方ができることは、上記技術と共に必要といえる。本書は後者に関して、豊富な示唆を与えてくれる。


(以下引用と感想)

30 書くのではなく、頭の中の「ぐるぐる」を、伝わる言葉に「翻訳」したものが「文章」。 ぐるぐる=頭の中を駆け巡る、言葉と言葉以外のぼんやりした「感じ」や「思い」のこと

42 聞いた話を誰かに話す。これは「翻訳」の第一歩だ。

 話すことによって得られる①再構築、②再発見、③再認識

135 文章を書くことは、他者を動かさんとする「力の行使」なのである。

 自分の文章の中に「主張」「理由」「事実」の3つがあるか。そしてこの3つはしっかりと連動しているか。これらによって「論理的な文章」になる。

143 面倒くさい細部を描いてこそ、リアリティを獲得する。

 読者の理解を促し、文章の説得力を強化する。

168 たったひとりの「あの人」を思い浮かべて書く

 みんな、万人を動かす、喜ばすことはできない。

197 文章の「起『転』承結」を成立させるためには、冒頭に「自らの主張と真逆の一般論」を持ってくる必要がある。

 仮説と検証で、読者を巻き込む=読者を当事者にする。

 そのためには「一般論→仮説(関係は『一般論⇔仮説)』を早く提示すること。

 起:一般論

 転:仮説の提示

 承:根拠・事実

 結:締め

 ①主張、②反論、③再反論、④結論

212 文章とは「答え」を示すものではなく、その「解き方(ゴールまでの道のり)」を示すもの

 =論理

 「自分の頭でわかったこと」以外、書いてはいけない。

239(編集について)「ぐるぐる」を紙に書き出す=可視化

 ①キーワード、連想→②それ以外 で2回はブレストする

 自分を疑う、疑いを晴らしていく=説得力になる。

264 言葉で反論しなければならないということは、それだけ言葉が足りていないのだ

250(推敲について)推敲とは、ある意味サンクコスト(もったいない、と思う自分)との戦いだ。

251 少しでも長い文章を見つけたら、さっさとハサミを入れて短い文章に切り分けたほうがいい。

 ①冗長さを避けてリズムをよくする

 ②意味を通りやすくする

 ③読者の不安をやわらげる

 +図示できるか? 主張や論理展開を図で表すことができる=明確な文章

268 「いい文章」とは「読者の心をうごかし、その行動までも動かすような文章」のこと