2008年7月6日日曜日

精神医学(草稿)

統合失調症、躁うつ病、神経症の三疾患について、病因、症状、治療について、各疾患ごとにまとめなさい。
1.はじめに
 本稿では、統合失調症、躁うつ病、神経症の病因、症状、治療について、テキスト『[増補]精神医学』(へるす出版)を参考にまとめる。

2.統合失調症
 統合失調症は、精神障害の中でも最も発病危険率が高い(0.8%とされている)。内因性の障害とされているが、病因は不明とされており、個人差の大きい様々な症状に対し、生物・心理・社会学的な治療を実施することにより、社会復帰を目指すことになる。慢性進行型とも言われ、進行し続ければ「荒廃」と呼ばれる状況に陥る可能性もある。以下、各項目に沿って説明する。
(1)病因
 前述の通り明らかになってはいないが、有力な仮説として「脆弱性-ストレスモデル」があげられる。これは、心理的ストレスが遺伝的な素因で規定された発症脆弱性を上回ることにより、脳内の神経伝達に障害が発生するという説である。現在も様々な研究がされており、発症の病因は、遺伝子による脆弱性の規定だけでなく、多因子であると考えられている。
(2)症状
 初期、急性期、慢性期と分けて考えられることが多いが、その症状は個別に異なる。
代表的なものをあげると、初期には、疲労感やうつ状態、不定愁訴に相当する症状が表れる。急性期には、妄想知覚や関係妄想、さらに幻覚(幻声)といった、陽性症状と呼ばれるものが表れる。これらの症状が治療によって改善されると、病前に戻ることもあるが、それ以外の人には残遺症状が残り慢性期となる。その症状は陰性症状と呼ばれ、代表的なものには、感情平板化や意欲減退がある。
 詳細は省略するが、その症状は「感情障害」「思考障害」「意欲・行動の障害」「自我意識の障害」「幻覚」の5つに大別される。
(3)治療法
 治療法は、前述した3つの側面を「身体療法」「精神療法」「社会復帰のための治療法」と分類する。症状や、個人の特性に応じ、組み合わせにより治療する。
①身体療法
大別すると、薬物療法と電気けいれん療法とに分類される。前者はより一般的で、抗精神病薬の服用により、神経伝達物質の障害(主にドーパミンD2受容体、セロトニン受容体、その他の遮断)を改善する。鎮静作用等の副作用もあるが、総じて、副作用を上回る症状の改善が見られるといえる。最近では、より副作用の少ない非定型抗精神病薬が開発されている。効能にも個人差があるとされ、症状の改善・安定と副作用との調整のため、服薬の調整が必要となる。
 後者は、前者による改善がみられない場合や、昏迷状態が続く場合、または自殺の危険が高い場合にのみ適応となる。
②精神療法
 支持的心理療法が基本とされる。心理教育などを含め、病気の説明、薬物の服薬管理、再発防止、家族の対応など、病気に対する具体的な対処を身につけてもらうことを目的に実施する。
③社会復帰のための治療法
 社会生活能力の低下を防止し、回復を促進するための取り組みとなる。具体的には、以下の4つがあげられる。日常生活の基本的な事柄について具体的に指導する「生活指導」。通常は集団で、対人関係の取り方や基本的な社会生活技能、それらを包括した問題解決技能等を身に付け、環境への適応力を高めることを目的とした「社会生活技能訓練(SST)」。スポーツやゲームを通して、活動性や関心を高める「レクリエーション」。勤労作業を通して、意欲、自発性、社会性等、障害された精神機能を回復することを目的とした「作業療法(OT)」

3.躁うつ病(気分障害)
 躁うつ病は、統合失調症と共に二大精神病の一つとされている。発病危険率は約1.4~1.6%と推定される。気分障害の中で、症状により双極型と単極型に大別される。「躁うつ病」というと、主に双極型を指す。基本的に感情の障害とされ、適切な治療を受けることにより、ほぼ病前のように回復する例もあるが、再発する例も多い。
(1)病因
 解明されていないが、これまでの研究から、内因性の病気であり、脳の機能的障害に、精神的ストレスや身体面のストレスが加わった時に発病すると考えられている。機能的障害は、家族や血縁といった遺伝素因もさることながら、病前性格と言われるその人の性格が影響すると考えられている。
(2)症状
 躁うつ病の症状は、「うつ病相」と「躁病相」とに大別される。躁病相からうつ病相に移行する時等に「混合状態」と呼ばれる、双方入り混じって出現することがある。
 躁うつ病の症状は、以下の4つに分類される。「感情」「思考」「欲動」「身体症状」である。例えば、「感情」では、うつ病相では、抑うつ、絶望感、希死年慮などが表れるが、躁病相では、爽快感、楽天的、攻撃的などの症状が表れるなど、「思考」「欲動」「身体症状」でもほぼ同様に、概ねうつ病相と躁病相とで逆転したような症状が表れる。
(3)治療法
 「薬物療法」「電気けいれん療法」「精神療法」に大別される。多くは「薬物療法」と「精神療法」を組み合わせて治療に当たる。「電気けいれん療法」は重症かつ自殺の危険が強い、または薬が使えない場合に用いる。
 薬物療法は、抗うつ薬と抗躁薬を症状に合わせて服用する。薬の効果が出るまでに1~2週間かかることが多く、口渇や眠気、だるさといった副作用が生じることもある。抗うつ薬の分類として、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬がある。前者ほど、より副作用が少ないとされているが、効能は個人差があり、医師による服薬調整は必要である。
 精神療法は、主に薬物療法と併用することにより行われる。要点は、本人の気持ちに共感し、否定的なものの見方を主とした考え方の癖に気づかせることとされている。
また、躁病患者に対しては、勢いにつられることなく冷静に接することが望ましいとされ、うつ病患者には、本人が怠けているわけではないことを理解し、安易な励ましや、気晴らしを進めることも、本人の自責や自信のなさを刺激することにつながるため、避ける方が望ましいとされている。

4.神経症
 従来の診断で言うところの神経症は、現在使われている診断基準では統合再分類されている(ICD-10ではF34とF40~45、F54、DSM-Ⅳ-TRでは300と308、309が該当する)。従来の神経症に該当する診断名は、「神経症性障害」とされ、ICD-10では「ストレス関連障害」と「身体表現性障害」を含めた包括群となっている。この包括群の大部分は「心因性」とされており、この点が、前述した二つの障害との大きな違いといえる。「神経症性障害」の代表的な診断には、特定の場所や環境について不安が生じ、動けなくなるなどの症状が表れる「恐怖性不安障害」や、ある考えが繰り返して想起される「強迫性障害」などがある。包括群で見れば「解離性障害」や「持続性気分障害」も含まれる。
(1)病因
 診断名によって具体的な原因は異なるが、大部分に共通することは、通常、危険でない具体的な環境に対して、その人なりの考え方により、不安が誘発される。その考え方は、過去の具体的な経験が影響して形成されることもあれば、根拠のない考えにより形成されてしまうこともある。
(2)症状
 その人なりの考え方や、特定の状況に対する経験などにより発生した不安や恐怖により、身体症状や制御できない行動が発生する。
 例えば、人前で話すことに対し強い不安を感じ、その場に立ちすくんでしまったり、動悸や息苦しさを伴い、意識が遠のいていく等がこれに当たる。他にも、公共交通機関を利用することに対する恐怖が拡大し、外出できなくなり、完全に家にこもってしまうこともある。これらのように、特定の場所や状況に対して症状が表れるだけでなく、何についても過度に心配し、将来に対する懸念により、慢性的な不安状態が続くことも、これに含まれる。
(3)治療法
 躁うつ病の治療に準ずる治療が実施される。すなわち、「薬物療法」と「精神療法」の併用による。精神療法により、考え方(認知の歪み)の是正や、それと同時にサポートを受けながら曝露(不安状況に対し、回避せずに接していく)していくことにより改善を図る。身体症状が顕著な時には、抗うつ薬が処方されるようになった。

5.まとめ
 三疾患についてまとめてきた。各疾患の共通点と相違点を三点から整理する。
 まず、病因について。神経症の一部については、過去の具体的な経験が認知の歪みを形成すると考えられるが、その他の疾患や、統合失調症および躁うつ病については、明確な病因は特定されていない。しかし、統合失調症や躁うつ病に共通して言えることは、何らかの要因による当該疾患の「かかりやすさ」があり、それに精神・身体的なストレスが過剰に加わることにより症状が表れる、内因性の疾患である。
 次に症状について。病因とも関連するが、これらの精神疾患のいくつかの症状は、診断名に関わらず共通して表れる。例えば、考えがまとまらないことや、不眠などである。しかし、その症状が出る理由は患者毎に異なる。統合失調症や躁うつ病であれば、脳の機能の不全によるものも疑われるし、神経症では認知の歪みの内容とその理由による。患者毎に異なる症状を、できるかぎり正確に把握した上で、有効な治療や働きかけを検討したい。
 最後に治療法について。三疾患のどれもについて、薬物療法と精神療法が用いられる。このことは、これらの疾患が、身体的な機能の不全と、精神的な認知の歪み、そして社会的な参加の障害によって構成されており、そのそれぞれを改善することで、社会復帰が実現することを表している。
 現職でも、この三疾患の患者を対象にカウンセリングを実施することがある。最新の知識を正確に把握し、医療から現在に至るその人の状況を掴み、その人にあった対応と社会復帰に向けた計画を提案できるようになりたい。

(勉強メモ)


なお、公開されている文章をコピーして提出課題とするのはやめてください。