2008年7月27日日曜日

アーネスト・シャクルトン『エンデュアランス号 奇跡の生還』ソニー・マガジンズ、2001年。

第一次世界大戦が開戦する間際、南極大陸横断と学術的作業を目的に、アーネスト・シャクルトン隊長が率いる28人が南極大陸へ向かった探検の記録。
南極の厚い氷に阻まれ、船ごと氷盤に閉じ込められてしまい、本来の目的である南極大陸横断は成功しなかったのだが、1年半程の航海を一人の死者を出すことなく生還した、エンデュアランス号の乗組員の冒険を記したノン・フィクション。
過酷な自然条件下で生還するために四苦八苦しながらも、その置かれた環境を楽しみ、知恵を絞り、前向きに、希望を持って、前進することを辞めなかったシャクルトン隊。
その隊長、アーネスト・シャクルトンによる著書、”South –A memoir of The Endurance Voyage”の訳書。

以前、別の著書によるこの探検のノンフィクションを読んだことがあり、その時からアーネスト・シャクルトンという人の人間的魅力に感銘を受けていた。
個人的に、普段小説はあまり読まないのだが、小説から学びとれることの素晴らしさに触れる機会もあり、またノン・フィクションを中心に読んでいこうと思ったところである。
書棚に「シャクルトンコーナー」ができてしまっていたことに気づき、今回読んでみた次第である。

文句なしに面白い。
ただし、映像とセットで説明されればもっとクリアに状況がわかるところを、ほとんど文章のみでまとめているために、状況をイメージするのが難しい箇所も多々あった。
とはいえ、実はIyokiyehaが「歴史上の人物で尊敬する人は誰ですか?」と問われた時に、シャクルトンの名前が出てくるくらいに、この人のリーダーシップには感銘を受けている。
どんな逆境に立たされていても、頭はどこまでも冷静に、しかし熱い心と、どんな状況も楽しもうとして、実際に楽しんでしまう、この人の「芯の太さ」は若輩の私がいつでも真似したいと思っていることの一つである。
厚い氷にエンデュアランス号が閉じ込められてしまい、漂流しているときにクリスマスパーティーだの、氷盤での犬ぞりレースだの、サッカーだの。
いわゆる「遭難」している状況の中で、こうした発想が生まれ、実際にやってしまうという、行動力とも想像力とも言い切れない「太さ」は、どんな技術をも凌駕し、人が人としてよりよく生きることを考えた時に、もっとも大切な「希望」と切っても切れない関係にあるように思われる。
私の思考パターンに「希望を捨てない」と「前進を辞めない」という二つの大きなものが刻み込まれたように感じられる。

Iyokiyehaおすすめの一冊。
読み応えのある冒険小説を読みたい方、逆境の中で人を率いるリーダーシップを学びたい方、Iyokiyehaの目指す人間像を知ってみたいという奇特な方、ぜひ一読ください。

おすすめ度:★★★★★