2008年7月6日日曜日

服巻智子『自閉っ子、自立への道を探る』花風社、2006年。

佐賀県にある自閉症特化型支援機関「NPO法人それいゆ」の相談部門「それいゆ相談センター」のセンター長を務める、服巻智子(はらまき・ともこ)氏によるASD当事者との対談集。
作家として、小学校教員として、バイク便ライダーとして生活するASD当事者の、仕事をする上での困難や、生活のしづらさ、その時々の考え方など、自分をふりかえることによる素直な感情が対談の節々に表れている。
「普通」概念のあいまいさや、「社会適応」の考え方について、自閉症者と接する機会のある私自身にとっても、深く考えさせられる内容だった。
とはいえ、対談の形式をとっているので、話題の一つ一つは非常にわかりやすい。

その人にとっての「幸せ」は何なのか、「安定した生活」は何なのか、そして「希望」は何なのか、社会復帰を常に考える職に就く者として、「どう引き出すか、どう気づかせるか」ということ(私の持つ答えを「わからせる」のではなく、その人が「持っていても表現できないこと」をいかに気づかせるか、ということ)について、技術の向上と考え方の更新を意識するきっかけとなった。

ASD者の職業生活を考える上で、重要な箇所について以下簡単にまとめる。
服巻氏が、ASD者の職業訓練を考える上で重要としていることは2点。
一つは、「助言を求める練習」(199ページ)。
もう一つは、「助言を受けたときに、それを受け入れる練習」(同上)。
自分が思っていないことであっても、受け入れることが重要であるとしている。
さらに、就労支援をする上で重要としていることは、以下の通り。
服巻氏と花風社浅見氏の発言を引用する。

服巻「(前略)職場で第三者が介入して、障害の特性を説明することが必要ですね。本人が言うと、感情的に受け取られてしまうでしょう。だから第三者が必要なんです。(後略)」
浅見「ただ、そこで一言言いたいのは、そういう介入はきちんと、ビジネスの論理をわきまえた人にやってもらいたいということです。人権という言葉を振り回してやってきても、民間企業は受け入れにくいと思います。特に中小企業は。(後略)」(202ページ)。

ガツンと響くやりとりでした。