2008年11月9日日曜日

法学

テーマ:わが国における行政救済法制について略述した上で、行政争訴2法(行服法、行訴法)の内容および異同を説明しなさい

1.はじめに
 日本における行政救済法制は「行政により自己の権利・利益を侵害されたとき」に、「その是正を求める」ために定められている(参考文献1、166ページ。以下本文中のページ数は同文献)。公権力の行使と、公共の福祉とが相反するものである場合や、個人に対する行政処分がその個人の権利や利益を著しく侵害する場合に、行政機関の暴走を抑制するための制度といえる。
 本稿では、行政救済法制の概要をまとめた上で、特に行政不服審査法(以下「行服法」)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」)の二法の内容をまとめる。

2.行政救済法制体系
 日本における行政救済法制は、以下の三つに分類できる。一つ目は国家補償、二つ目は行政訴訟、三つ目は苦情処理制度である。行政訴訟は次章で説明する。
(1)国家補償
 国家補償には、国家賠償制度と損失補償制度がある。
 国家賠償制度はさらに、公権力の行使に基づく責任と営造物責任との二種類に大別される。前者は、行政機関に勤務する公務員が、その職務の中で故意又は過失により、違法に他人に損害を加えた時に、国又は公共団体がその損害を賠償する制度である。後者は、公の営造物(道路や河川など)の設置や管理について、その要件が欠格していたり、されるべき管理がなされていない等の条件により、他人に損害が生じた場合に、国又は公共団体がその損害を賠償する制度である。
いずれの場合も、通常公務員個人は責任を負わないが、故意または重過失である場合のみ、国や公共団体が当該公務員に求償権を行使できる。
 一方、損失補償制度は、公権力講師が適法である場合の特別な犠牲に対し、それを調整するための財産的補償である。
(2)苦情処理制度
 行政に対する苦情処理には、行政相談制度がある。総務省が行う、行政全般についての苦情や相談、意見・要望を受け付け、その解決や実現を促進するために、必要なあっせんや行政制度および運営の改善に反映させる制度である。

3.行政訴訟
 日本における行政訴訟は二つある。一つは行服法に基づく行政不服審査制度、もう一つは行訴法に基づく行政事件訴訟制度である。
(1)行政不服審査制度
 行政上の不服申立てに関する一般法を意味する。行政庁の違法や不当処分等に関する不服申立てに対し、簡易迅速な手続きにより救済を図ることを目的としている。
 不服申立ての種類には三種類ある。不服申立ては、ある行政庁の処分が対象となるが、一つには、当該行政庁以外の行政庁に対し不服申立てする審査請求、二つには、当該行政庁に対し不服申立てする異議申立て、三つには、審査請求の採決に対し不服がある場合に、さらに上級庁に提訴する再審査請求である。例えば、市町村長による処分に不服がある場合、市町村長に対し不服申立てをするのが異議申立てで、都道府県長に対し不服申立てをするのが審査請求、都道府県長の採決に不服がある場合に、当該処分を所轄する大臣に対し不服申立てをするのが再審査請求と説明できる。このことから分かるように、行服法は不服申立ての請求先を、処分庁・上級庁を含む行政庁としている。
 審査・再審査請求に対する裁断は裁決、異議申立てに対する処分庁の裁断は決定であるが、裁決・決定の種類は、それぞれ却下、棄却、事情、認容の4種類である。判断の対象となるのは、当該処分・不作為の適法性と妥当性で、手続きは書面審理が中心となっている。
(2)行政事件訴訟制度
 ある行政処分及び不作為について、その適法性を裁判所に問うための制度である。基本的に民事訴訟法に従う内容となっているが、行訴法を付け加えたものにより行政訴訟は構成されている。よって、当該申立てについて、地方裁判所の判決が不服であれば控訴して高等裁判所が裁判し、さらに高等裁判所の判決が不服であれば最高裁判所に上告することができる。よって、行訴法における不服申立て請求先は裁判所である。
 訴訟の類型は、行訴法第3条から6条に規定されている(その他のものについては第7条)。
 判決は、行服法とほぼ同様に、却下、請求認容、請求棄却、事情の4種類である。判断の対象となるのは、当該処分・不作為の適法性で、手続きは口頭弁論を伴う対審制となっている。

4.まとめ
 以上、行政救済法制について、特に行政訴訟に関する二法を中心に説明した。二法の特徴を端的にまとめると、ある行政処分・不作為について不服申立てを行う際、行服法に基づく行政不服審査制度は、その申立てを行政庁が簡易・迅速・低廉に審査するのに対し、行訴法に基づく行政事件訴訟制度は、その申立てを裁判所が客観的・公正中立的な立場から審査するものであるといえる。
 私個人としては、私生活においても、精神保健福祉士となった後の業務においても、活用せずに済むのが最もありがたい制度といえる。ただし、私生活および業務の中で、個人の権利・利益を不当な行政処分により侵害された際、その是正を求める正当な手続きがあることを覚えておきたい。



 
(勉強メモ)

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