2007年3月11日日曜日

就労移行支援事業(3/11)

 これまで、仕事の上では正直ほとんど気にしていなかったが、自立支援法の施行により福祉施設が大きな変化の時期を迎えている。本日午後のシンポジウムのテーマはまさにこの点。勉強不足だったので、議論についていけていなかった部分もあったが、充実した情報収集ができた。
 余談だが、JC-NET代表小川氏のシンポジウムのファシリテートは抜群にうまいと思う。シンポジストとあらかじめ、綿密な議論が交わされた上で、議論の落としどころを明確にしておき、それらにまつわる話題をふっていく。我々はどうすればいいか?ということだけではなく、現状の理解(好事例としてどんなものがあるか、そうではないところではどうか、行政の立場としてはどうか、等)を徹底的に深めていく。この緊張感のあるやりとりは、そこらへんではなかなかお目にかかれない技術だと思う。
 本題。自立支援法の施行により、福祉施設も就労支援をやっていくことになる。その時、福祉施設としては「就労移行支援事業」として事業申請し、自立支援法の内容で就労支援を進めていくことになる。話題は多岐に渡ったが、主なところは以下の3つ。1)就労移行支援事業の利用者をいかに確保していくか、2)フォローアップについて、3)ネットワークの構築について。
 1)は現状に正直驚いた。就労移行支援事業の利用者を確保するのが大変であるとのこと。全体的な数の論理はよくわからなかったが、20人定員の就労移行支援事業の場合、損益分岐点は17人とのこと。常時17人、同支援の利用申請をあげることができなければ、損失となっていくらしい。一方で、法律によって提案されている、養護学校卒業→福祉施設→一般就労、というルートに対して、同施設の状況では、今年度養護学校卒業生の内、福祉施設に入る予定者は5人とのこと。定員30人の施設では、35人契約者がいれば受け入れるつもりだが、そんなことはありえない、とのこと。2年を限度に一般就労を目指すという「縛り」や、費用負担が原因の一つとなっているようだ。費用も、労働行政のもつ制度では無料もしくは訓練手当てという形で支給されるものと、施設における就労移行のための訓練に支払うものとがあり、利用者にしてみれば「なぜ就職するために、お金を払って訓練を受けなければならないのか」ということにもなる。このあたり、労働行政としては福祉の現状を踏まえた上で事業に取り組む必要を感じた。
 2)については、就職後のフォローアップを、どこの施設が担当するかという話から。この結論としては、ケースバイケースというところ。所属している施設であるとか、就業・生活支援センターであるとか、様々な選択肢はある。一つ押さえておくことは、就業・生活支援センターが全てのフォローをできるわけではないということ。今後、就職数が増えてくると、必ず支援センターが足りなくなる。
 こうした柔軟な支援体制を構築するために、関係機関同士の連絡体制(ヨコの関係)を平素から持っておくことが必要といえる。3)についてはそうした流れで話題が盛り上がった。加古川の事例では、就業・生活支援センターが雇用支援連絡会議を1回/月で開催しており、養護学校、福祉施設、職業センター、安定所など、様々な関係機関との連携を保っている。労働行政の立場としては、連携の通達が着てから姿勢が変わったとは言われたが、それ以上に来年度から始まる就労移行会議に就労移行支援事業を持つ施設がどれだけ参入していくのかということが重要視された。この機会を逃すと、乗り遅れてしまうとの助言がある。一方で、裏情報ではあるが、安定所も担当官次第のところがあり、一つ事実として上がっているのが、窓口の相談員の減員となること。それにより、担当官の動き方がどうなるかということをある人が心配していた。
 また、企業のネットワークも一部で構築されつつあり、特例子会社を切り盛りしてきた事業所関係者が定期的に会議を開催しているとのこと。そして、好事例や応用可能な事例いついて、地方への情報提供も始まるとの情報があった。 障害者就業・生活支援センターと就労移行支援事業の双方を持っている施設が、他の施設による就労移行支援事業を経て就職を目指す就業・生活支援センター利用希望者を支援できるか、というところから始まる。当然「支援する」わけだが、多少のジレンマはあるとのこと。ただし、確かな施設は生き残るため、今後そうした状況がでてくるのは必至だろうとのこと。ただし、そうした状況も、必要に応じては利用者確保(本当に働ける人が、必要な施設に紹介されるという意味で)にもつながるようになるといいという希望もあった。