2012年11月20日火曜日

堀込泰三『子育て主夫青春物語 「東大卒」より家族が大事』言視舎、2012年。


長男誕生時に2年の育児休業を取得し、その後「主夫」に転身し翻訳家として在宅勤務をしながら二児の子育て中の堀込氏によるここ数年の記録とエッセイ。
一見派手に見える堀込氏の生き方・考え方に、父親としてあるいは家族とともに生活する上で「大切なこと」がちりばめられているように感じた。

私も専業主婦家庭にあって第二子誕生時に育児休業をとった経験者です。私の場合は、頭のネジが多少緩んでいることもあり(笑)、それほど心ないことを言われた経験はないのですが(言われていたのかもしれないけど・・・)、「すごいですね」とか「いいことですよね」と言われる度に感じることは、いわゆる普通の家庭にあって普通の子育てをすることが、いかに大変なことであるか、そしていわゆる「モデル家庭(厚労省とかが制度設計の基本として考える)」にあって育児休業取得のハードルがいかに高いのかといったことでした。
このことは今でも考えていることですが、やはり賃金補償の面が一番のハードルだと思います。

イクメン的な書籍を幾つか読んでいて感じることは、誰も育児休業取得そのものを賞賛していないことだったりします。私も同感ですが、数値目標として男性の育児休業取得率なんて数字が独り歩きするととかく育児休業をとればいいといった発想になってしまいそうですが、休業は選択肢の一つであって、大切なことは仕事生活と家庭生活のバランスをどうとっていくかということ、真の意味でのワークライフバランスなのだと今ならはっきりと言えます。

そこへきて堀込氏の本著は、逆単身赴任や退職、そしてフリーランスへと、一見派手にも見える生活の激変ですが、その根底に流れていることは家庭賞賛でも職場批判でもなく、一人の父親が自らのキャリアと家庭に真っ向勝負し、その時々で最良の判断を繰り返したということに尽きるのだと思います。
様々なニーズをすべて叶えられることは、人生においてほとんどないわけで、何を捨てるのか、捨てられないと思っているものを縛っているものは何か、ということを痛烈に考えさせられる一冊でした。軽快な語り口で非常に読みやすいのも堀込氏の人柄がでているのではないかと。

2012年11月6日火曜日

生活に彩りを -カクテル熱再びー


所沢へ引っ越してから、子育てにバタバタしつつも自宅で過ごす時間が増え何かまた好きなことでもやってみようという気にはなっていたのだけれども、そんな折新所沢にいいバーを見つけたり、iPhoneのアプリでBar Oasisなるものを見つけたり、部屋を片付けていたらシェーカーが出てきたりと、何だか様々なきっかけが重なったこともあり、飲み物作りに少しハマっていたりします。とはいえ、材料をイチから全部取り揃えるだけのお小遣いもないので、まずはできるところから、簡単なカクテルを食事の時にサッと作るなんてことをやっています。
Wine coolerは手軽で晩酌向き、Gin Fizzは少し甘めが好み、Shirley Templeならカミさんでも飲める、など、相変わらず自分で作るのはスタンダードなものばかりですが、ちょっと工夫するとすごく自分好みの味になるので結構楽しい。少し混ぜ物するだけで飲み物は様々な表情を見せてくれます。

ほんのちょっとしたことですが、ちょっとした生活のアクセントになっています。

中王子みのり『Hi!みのり』これから出版、2012年。


私の古巣「浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket)」との関わりの中で、お名前は伺っていたのですがまだお会いしたことのない中王子さん。夏休みにN-Pocketの事務所へ家族連れて行ったときに「みのりさんが本出したのよ~」と聞き、その場で購入。
全盲と下肢麻痺のハンデがある中王子さんが、2006年に参加したニューヨークシティマラソン前後の経緯であるとか、学生時代などを振り返って思うところ、普段の生活で素朴に感じていることを綴っているエッセイです。

この本を読んでいる時にたまたま全盲の方の介助をする機会があったのですが、頭では分かっていることもやってみると意外とできないものだなと実感させられた経験でした。振り返ってみれば珍道中なのですが、改札で「iyokiyehaさん、どこにいますか?」といわれてしまったり、そもそも私が初めての経路だったので、途中まで「iyokiyehaさん右です、右」と案内してもらったりと、何ともまぁ情けない限りで。
普段は気にならない電車での他の人の振舞いも、介助中となれば話は別。白杖持った人がいるのに優先席にどっかりと座っている若者に憤りを覚える場面もあり。
ただ、憤りと併せて「(目の不自由な人は白い杖を使うことを)知らない」ことが、差別的ともいえるような行動(あるいは気づかない)となってしまうのかもしれないと感じたのも事実です。
みのりさんのエピソードの多くも、1.「目が不自由な人である」ことがわからない、2.見えないことにより「困っていること」がわからない、3.頭でわかっていても「うまく手助けできない」といったことが様々な場面で起こっていることをそのまま記してくださっており、「あるある」とうなずくことも「なるほど~」と思わずうなってしまう箇所もありました。私のような仕事をしていてもまだまだ知らないことがあるわけですから、普段障害のある方と接する機会のない方にとっては目からウロコの内容かもしれません。

このような社会のバリアに関する鋭い視線もありながら、中王子みのりさんという積極的な人がニューヨークシティマラソンに参加するなど、前向きなエピソードも満載でした。元気になる一冊

2012年11月1日木曜日

理屈と現実 現場に流れるエネルギーみたいなもの

物事の要らないものを捨てていくと本質が見えてくる、なんてことが言われます。だけど、現場第一線で大切なものって意外とその周辺を流れているものだったりすることってありませんか?

先日のiPS細胞研究の山中教授が「基礎研究が重要」といったコメントをしていたことも記憶に新しいですが、世に出るものは確かに純化されてシンプルであることが求められます。だからこの件を否定するわけではない。

私が仕事としている職業相談なんてものも、限りなくシンプルにしていったらもっと効率よくできると思います。
「はい、応募しろ、いけー」
「辞める?わかった、言ってこーい」
「困った?何とかなるよ、がんばれ」
最近目の前で繰り広げられている対応の一部で、私は若干腹が立っていることもあるのですが、個別事情はさておき。
昨日、仕事を辞めようかどうしようかと迷っているクライアントさんと2時間近く話しをしました。

結論は、辞めるか短時間・短期間で続けるか、ということで、相談初めて5分くらいで聞き取っていた内容に落ち着いたのですが、その後はこの結論に至るこれまでの人生やその自分なりの評価、ここ1~2年の状況やお世話になった人のこと、あるいは未来志向の夢や希望など、言葉は様々ですが「いろいろと」「長々と」「延々と」「詳細に」話を聞いていました。
すると不思議なもので、「仕事をやめる」というクライアントさんの結論が膨大な感情に支えられて表出してきたものなのだな、ということがよくわかってきて、更に夢や希望から逆算していくとなるほど今の仕事を続けることのメリットって何になるのかな?と率直に考えさせられました。

調子を崩して職場に対していろんな要求がでてきた状態で、企業側はその要求を飲んで動こうとしている矢先の出来事ですから、本来は施設改善の対応を評価して継続勤務、なんていう大人な対応が一般的だと思うのですが、ここまで話を聞いた以上、私の元々のスタンスは大きく揺らいでしまいました。

流されているのかなぁ・・・と思いつつ、迷いながらもIyokiyehaなりのプライドでスタンスを定めたところです。
でも、クライアントさんの成育歴とその評価や夢や希望まで様々聞いて揺らぎない方針に整理できているので、企業との調整も(頭葉痛いけど)やりやすいと思うのは私だけでしょうか。

余計なこと=結論以外の2時間の相談、とすれば私がやっていることは「=無駄なこと」になるのでしょうが、なんとなく無駄になった気がしないんですよね。自己満足かもしれないけど。

2012年9月24日月曜日

NHK「プロフェッショナル」制作班『松本人志 仕事の流儀』ヨシモトブックス、2011年。

表題「NHKプロフェッショナル仕事の流儀」で、ダウンタウン松本人志をテーマとした放送回がありましたが、その際の取材内容の内番組放送から漏れてしまった箇所を再編集したもの。

本気でお笑いを極めようとしている姿勢は、番組を観ていても伝わるものがあるわけですが、その仕事はどのようにして作られているのかが垣間見える一冊。

印象的だったのは、
・アウェーの仲で観客を笑わせるときのドキドキ感
・仕切りのうまい人の条件は「踏ん切りの強い」人、無駄なものをきっぱり切り捨てられる人間
と語った箇所。

一見軽く見えてしまいがちな「お笑い」。しかし、ここには人が笑うことにプライドをかけて挑戦していく人の姿がありました。非常に読みやすい一冊。

長野伸江『この甲斐性なし!と言われるとツラい 日本語は悪態・罵声語が面白い』光文社新書、2012年。

洋画を字幕で観ていると「こんな表現するのか」と思うことがありますが、日本語にもいろんな表現があります。本著は日本語の悪態や罵声の時に使われる(ことのある)日本語について、その意味を古典から検討している。

目次だけ見ても、
・バカヤロー
・ブスとババアと淫乱と
・弱くてくさいは甲斐性なし
・犬は畜生、猫は泥棒
・鼻くそほじって、クソ食らえ
といったように、お行儀のよろしくない表現が満載です。

全体的なトーンとして、大変誠実に言葉の意味を探っているのだけれども、そのため少々歯切れの悪い箇所が目立つ。読み物としてというよりも、きちんと日本語を勉強するための一冊として読んだほうがいいように思う。それだけ丁寧に言葉を検討している、ということなのだけれども。

2012年9月23日日曜日

柏木恵子『父親になる、父親をする』岩波ブックレット、2011年。

最近は幽霊会員ですが、活動に賛同して会員になっているNPO法人Fathering JapanのMLで紹介されていた書籍。

NPO法人Fathering Japan

帯に「『イクメン』をブームで終わらせないために」と書かれているのですが、感情論ではなく心理学的な視点から父親の育児参加に関する現状と、母親の育児不安軽減および子どもの育ちの傾向について豊富なデータからシンプルに結論を導き出しています。

女性とは違い、男性は子どもの出生から「父親」になるわけではないこと。日本は男性の育児参加量が諸外国と比べかなり少ないこと。複数の人が育児参加する(アロマザリング)ことによって、子どもは多様な考え方、行動を学ぶ機会となることなど、「こう思う」のレベルから「こういう傾向がある」という段階へ認識を改めるのに適した一冊です。

子を持つ男性が、「もう一人の子ども」ではなく「父親」となり、父親をするきっかけとなる一冊。男性だけでなく、出産前後問わず女性にも読んでもらいたい書籍です。
何だか、この手のイベントや講習なんかで教科書に使えそうですね。

延髄反射のごとく暴言

雨が続きますね。
身体が動かせず悶々としてしまっているIyokiyehaです。
無料で身体を動かす自主トレ組にとって、雨はストレッサーにもなりそうです。

さて、落ち着いてきたので先週の話。
上司に暴言吐きました。以下やりとりです。

A 今日はいろいろあるので(定例の)打ち合わせはなし
I ○○さん、知っているんですか?
A 知らね
I 「知らねぇ」じゃねぇだろ

Aは上司、Iが私です。
目撃証言によれば、目つきはかなり怖かったらしく、このやりとりの後私が内線をとろうとしたら、すごすごとAが内線をかけていました。
この「知らね」の言い方が、軽く、いい加減で、大変癇に障る言い方だったので、次の瞬間暴言を吐いてしまいました。

立場上、すべきでないことをしたことについては素直に反省。週末かけてようやく反省したのですが、まぁ周囲からも自分としても「よく言った」というのが本音だったりします。
よくないですね、でも今の職場のストレッサーで純粋な仕事を除けばこのAが諸悪の根源だったりします。どうしたもんでしょうか・・・

2012年9月20日木曜日

Gin Fizz

何だかバタバタして、職場内を走り回っていたら「廊下を走るな~」と上司から言われたIyokiyehaです。学校??か?ちなみに黒光りする小さな6本足が廊下の隅を走っていたのですが、あまり気にしないようにします。

さて、昨日の仕事がすべて後ろ向き(就職うんぬんではなく、欠席が多い、やる気がない、とか)な指導を繰り返したため、すっかりエネルギーが枯渇してしまったようで、帰り道「仕事がつまらん」という考えに頭を支配されてしまいました。
こうなると完全に後ろ向き思考になり、なかなか思考のドツボから抜け出せず、子どもを寝かしつけながら寝てしまったらきっと明日の朝も気分悪いだろうなぁと。

そんな時にふと頭をよぎったのがGin Fizzというカクテル。私にとって思い出のカクテルの一つなのですが、思い立ったら飲みたくなって、夜な夜なスーパーへドライジンを買いに。
何年かぶりにシェーカーを出して作ってみましたが、分量もダメ、シェークもダメ、よって味もめちゃくちゃでしたが、そんなできそこないのGin Fizzを飲んだらちょっとだけ気持ちが緩みました。

今日はどうなるかな~

2012年9月3日月曜日

【AudioBook】NHKプロジェクトX制作班編『プロジェクトX挑戦者たち〈1〉執念の逆転劇』NHK出版、2003年。

NHKプロジェクトX制作班編『プロジェクトX挑戦者たち〈1〉執念の逆転劇』NHK出版、2003年。AudioBookは2011年。

以前NHKで放送されていた「プロジェクトX」の書籍版を音声化したもの。Febeで配信されています。
書籍版を読んだことがあったのですが、音声版で聴いてみるとまた異なる雰囲気があり新鮮でした。

富士山山頂に気象レーダーを設置するエピソード、世界企画VHS誕生の物語、青函トンネル工事など、新しい試みには官民問わず必ず未来を見据えた前向きに努力し続ける人達がいたのだと実感できる。
俗に言う「天才」が世の中を牽引するというわけではなく、ある組織、ある企業に在籍する他の人よりちょっと未来を見据えた人が突飛な考えを語りながら地道な努力をし続けた結果、世界に誇るものができあがったのだといっても過言ではないだろう。

終戦直後から高度経済成長期までの、産業・文化等のさまざまな分野において、製品開発プロジェクトなどが直面した難問を、どのように克服し成功に至ったかを紹介するドキュメントと紹介されており、その過程で活躍した(当時)一サラリーマンなど、いわゆる「無名な人」の語りで構成されている内容が非常に面白く、現実的で、迫力のある描写となっている。

内容が秀逸であるため、AudioBookならではのよさというところには至らないが、番組とともに間違いなく名著となるコンテンツだと思う。

2012年8月27日月曜日

理想の宣伝

娘を連れてスーパーへ行った時の出来事。娘が「オナラした~」なんて言うもんだから、「お外でオナラするんじゃない、お尻をキュッとして我慢せい」などというどうでもいいやりとり。娘がゲラゲラ笑うもんだから調子に乗って何度も「キュッ」とやって大盛り上がりしていたら、すぐ近くにいた売り子のお姉さんが金麦片手に苦笑いしていました。

完全な余談でした。

先日、外出から戻ってきた私の机上に1枚のメモ。見知らぬ会社の見知らぬ方から私宛に電話があったことを伝えるものでしたが、どうしても会社の名前に聞き覚えがないものですから、メモの発信者に質問する。
Q「これ、新規ですよね?」
A「だと思うんですが、Iyokiyehaさん宛でしたよ。何だか名前を知っておられたようで・・・」

こういうことは珍しくないので、特に気にしていなかったのですがちょっとだけ気になり、折り返しの電話の際に経路について質問してみたところ、東京在勤時に支援先だった企業の担当者経由で私の名前と連絡先、それに「困ったら連絡したら相談に乗ってくれるよ」というコメント付きで紹介してくれていたとのこと。

兼ねてから、こういう仕事の一番の宣伝は企業間の情報網に乗っかること、と思っている自分にとってこの一件は心動かされる出来事でした。

先週、ちょっとうれしかったこと、でした。

2012年8月24日金曜日

待ちの姿勢はザルで砂金をすくうようなこと

仕事をしていて以前から感じていたことだけれども、障害者雇用の現場において

企業:軽度身体障害者を希望
利用者:精神障害者、発達障害者が多数

といったミスマッチが恒常的に発生している。
このことは、ハローワークの窓口相談件数や福祉機関や就労支援機関の利用者層から言えることだし、毎年の6・1調査結果からも明らかになっているといえる。

ただし、企業の雇用支援をやっていると「それでも身体障害者」というニーズがあることもまた事実である。

私は、企業のこの姿勢そのものは否定されるべきことではないことと思っているが、ただこういった姿勢を堅持すると、思い通りに「雇用率」を上昇させることは難しい。
最近、上記統計から「ニーズに合う人は統計的にも大変少ないですよ~」という話をした上でハイレベル求人と職域開発求人を並列で出してもらうような形に誘導する。Iyokiyehaの腕の見せ所です。

結局、ハイレベル求人を提出していい人が来るのを待つ姿勢というのは、ザルを買って近所の川で砂金をすくうようなものでしかないといえる。コストはザル代、近所の川へ行く交通費程度で、ザルを動かすのはそれほど肉体的にも負担がない、ただしすくえる砂金なんかしれたもの。ハイレベル求人を金とするならば、待ちの姿勢はこういったことであることを端的に伝えられるとまた変わるのかと思う。
では鉱脈はどこにあるのか?いい鉱脈は人が入っていないところにあるから、そこへ行くためのコスト、鉱石を切り出す道具が要る、労働力が要る。必要があるのなら準備を促し鉱脈へ案内していくのが雇用支援のイメージなんだろうなと。

そんなことを考えながら、書留を出しにいった昨日の昼間でした。

2012年8月18日土曜日

村上春樹『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』新潮文庫、2002年。

ウィスキーが飲みたくなる、シングルモルト・スコッチの魅力が、村上春樹の静かな表現で身体に染みてくる。現地の素敵な写真とともに、まるで小説のような流れを感じる紀行文。何度も読み返したくなる一冊。

2012年8月13日月曜日

中西貴之『からだビックリ!薬はこうしてやっと効く -苦労多きからだの中の薬物動態』技術評論社、2009年。


宇部興産医薬研究所で働く著者が、多くの人の体内で起こっている薬の動向(薬物動態)について説明している一般書。
仕事でも自分のことでも、体調が悪い時に薬を飲むとそれは体内でどのように働くのかということを知りたくて読んでみた。効き方が分からなければ、副作用がどうして起こるのかということもよくわからないし、仕事で抗精神薬や抗うつ剤の勉強をすることがあるが、経口薬がなぜ脳に効くのかという疑問が本書を手に取ったきっかけ。以前読んだ本だが、再読。

薬剤研究をする人が書いた一般書ということでおそらく専門的な言葉を噛み砕いてわかりやすい説明に徹して書かれた本だと思う。辞書や参考書がなくても読破できた。
全体を通して語られていることは、薬をいかに体内に吸収させるかということと、吸収された薬がいかに薬物代謝のしくみをすりぬけて患部に到達させるかということに苦心していることである。普段何気なく飲んだり貼ったりして使っている薬の開発過程には、こうした仕組みを熟知してすり抜けたり、熟知した上でその作用を利用するなどの知恵比べが繰り広げられていると感じた。
薬の開発もさることながら、幾重にもわたり身体を守るしくみを持つヒトの身体(自分の身体も含まれるが)に感心したのはいうまでもない。


(以下、Tweet)

宇部興産医薬研究所で働く著者が、多くの人の体内で起こっている薬の動向(薬物動態)について説明している一般書。イラストやたとえ話が豊富で非常にわかりやすく薬物動態の基礎の基礎(なのだろう)が説明されている。

適用経路:薬の投与方法は効果を期待する場所と薬の目的による。経口投与の場合には主に小腸から体内に九州される。小腸を取り囲む血管に入り肝臓に達する。シトクロムP450という薬物代謝酵素が薬を別の形にしたり分解する。
ADME:薬物動態学の4つのキーワード。Absorption吸収、Distribution分布、Metabolism代謝、Exclusion排泄。

吸収:消化管の内側は身体の「外側」になる。体外から体内に薬を吸収するためには工夫が要る(次以降)。胃:酸性で分解、小腸:(十二指腸→空腸→回腸)十二指腸は物質を選別する。大腸:直腸付近は直接投与すれば吸収されやすい。
吸収(トランスポーター):SLCとABC。細胞膜を通過しにくい物質を効率よく体内に取り込んだり(SLC)、逆に進入してしまった有害物質を細胞外に排出する(ABC)ためのしくみ。腎臓は1日原尿180Lをろ過する。
吸収(排出):ABCトランスポーターP-gp(P-糖タンパク質)。消化管に存在し有害物質を体内から体外に排出する。血液脳関門(BBB)にも多く存在。神経細胞にも存在し、アルツハイマー病はコリンのトランスポーター異常。

分布:薬は血液中タンパク質と結合して安定する。しかし、タンパク質と結合していると細胞内に入り込むことができず(分子が大きくなる)薬の効果がなくなる(タンパク結合率)。タンパク結合した薬は、肝臓での分解を避けることも。

代謝:酵素の反応で薬が別の形に変えられてしまう反応のこと。代表はシトクロムP450。働きは個人差が大きく遺伝子配列や、遺伝子の活動を制御する転写因子の機能レベルの違いによる。グレープフルーツジュースによる代謝妨害。

排出:腎臓の機能「糸球体ろ過」と「尿細管分泌」。糸球体ろ過は血液中から不要な物質を分子量によって尿中に排出する。尿細管分泌はろ過によって排出された水分を再吸収する際トランスポーターの機能により再吸収する。
排出2:肝臓と胆汁。小腸から吸収された薬は肝臓へ移動する。一部は肝臓の代謝をすり抜け血液循環と共に全身へ。一部はグルクロン酸と結合し胆汁と共に小腸へ戻る。一部は結合したまま糞便中へ排泄。一部は細菌の働きで再吸収される。

薬物相互作用と酵素誘導:ある薬が肝臓の働きを抑制し別の薬の代謝を邪魔したり、臓器吸収時にトランスポーターを占有し一方の薬が吸収されなかったり、血中濃度があがるなど。また代謝酵素を増強し他の薬が代謝されて効きが悪くなる。

飲み方:食前・食後・食間。基本的には食物を摂取した後の方が、消化管が活性化されており薬の吸収もよくなる。アルカリ性では溶けにくい薬の場合は、食事をすることで胃がアルカリ性になるため吸収が悪い。コーラはCO2、牛乳は油分等。

アルコール:アルコール脱水素酵素とシトクロムP450のどちらがアルコール分解に関わっているかにより異なる。前者の場合はアセトアルデヒドが生成され不快な気分になる。後者が多いとウワバミとなるが薬も分解(代謝)しやすい。

脳:脳には薬に対する強固なバリアがある「血液脳関門」。大脳辺縁系は本能を司り、大脳新皮質はその本能を抑制する働きがある。アルコールは血液脳関門を通り抜け、大脳新皮質に作用するため「酔う」。脳が興奮ではなく抑制される。

効き方:肥満の人=尿からの排泄が多いが、油に溶けやすいものは脂肪が取り込み消失が遅くなる。血液に残りやすい。乳幼児=2歳でほぼ大人と同じ。それまでは弱め。高齢者=効きやすい。細胞中の水分量が減るため血液へ。

DDS:Drug Delivery System薬を届ける3つの技術。吸収改善、放出制御、標的志向化。放出制御=体内(血液中)の薬物濃度を保つ技術。標的志向化=特定の場所に薬を効かせる。抗がん剤。

プロドラッグ:Caco-2細胞透過性実験を経て吸収が悪い場合、薬の構造を変化させるかプロドラッグ化する。細胞を通り抜けやすい物質を薬に付加。トランスポーターを利用できる分子を付加。酵素が反応できない有機化合物を結合。

血液脳関門Blood Brain Barrier:BBBでは細胞の密着度が高く、薬が通過することは困難。またP糖タンパク質のくみ出し機能が加わる(くみ出しが効かない場合は濃度が70倍近くになる。
生命維持に必要な成分(栄養素)は、専門のトランスポーターによって取り込まれている。BBBを超えて脳に作用する薬は、薬の大きさが小さく(分子量数百程度)、油に溶けやすい性質を持っている。

徐放化:同じ成分の薬でも、その効果を持続的にするための工夫。タブレットの工夫やテープ化など、錠剤から溶け出す量を調整したり、薬成分の分子と結晶を使い分けるなどする。画期的な改善となった例が多い。ホクナリンテープなど。

抗がん剤1:副作用について。がん細胞であっても正常細胞であっても薬が及ぼす作用は同一。がん細胞に薬が届けば治療効果となり、正常細胞に薬が届けばそれは副作用となる。
抗がん剤2:DDS技術。1.放出制御型DDS、2.ターゲティング型低分子・高分子薬物、3.ターゲティング型微粒子DDS、4.分子標的治療薬。
放出制御型DDS:抗がん剤をカプセルやゲルに封入し、そこから徐々に薬が溶け出すように工夫する。長時間にわたり薬を患者に供給できる。オロス錠の欠点は錠剤そのものが排泄されてしまうこと。皮下や筋肉に薬を埋め込む方法。
ターゲティング型低分子・高分子薬物1:がん細胞では活性の高い酵素に着目し、その酵素によって抗がん物質が生成されるように化学合成されたもの。標的となる細胞の特殊能力を見つけ出しそれを利用してDDSを行う。
ターゲティング型低分子・高分子薬物2:がん細胞では血液透過性が高く、分子量の高い薬が血管から流出しやすい。またリンパ系が未発達で腫瘍組織に薬物が移行すると蓄積しやすい。そこで血液に圧力をかけ高分子薬物を押し出す方法。
ターゲティング型微粒子DDS:細胞膜と同じ構造を持つ脂質二重層や油滴に薬を封入する方法。油っぽいものとして肝臓で分解されてしまうが、水に溶けやすい性質を持つひものような化合物と結合させ、血液中に長く滞留させる。
分子標的治療薬:がん細胞に特徴的に見られる細胞構造や、がん細胞特有の著しい増殖や転移に関係している分子に着目し、それらと親和性を高くなるように設計されたもの。免疫が機能するようにする。がん細胞の血管新生を抑制する。

未来の薬:カップゼリーやタンクを皮下に埋め込む方法といった飲みやすさや徐放に特化したもの、また経皮吸収型薬剤やイオンフォレシスなどヒトの性質を活かして薬剤を吸収するなど、形態が個別化が図られていく。

2012年8月10日金曜日

Twice upという飲み方


何事も初めてということはドキドキワクワクするものだけれども、よく飲むお酒も飲み方を変えるとこんなにも香りや味が変わるのかと驚いた出来事でした。
あるバーで、Twice upという水割りの方法と、アルコール度数を20%程度に保つことによって香りが拓くこと、等を教わりストレートで飲むのと比べてみたところ、びっくりするくらい香りが立つことを知りました。

二件目でカクテルを飲みに行ったのだけれども、こういう副産物があり非常に満足しています。
参考までにウイスキーに関する情報まで。


http://www.mars.dti.ne.jp/~teramo/index.html
WEB: UISGE BEATHA