2009年2月22日日曜日

森岡正博『33個めの石 ――傷ついた現代のための哲学』春秋社、2009年。

生命学を提唱し、無痛文明論を展開する哲学者、森岡正博氏の著書。
『労働新聞』連載を加筆修正・書き下ろしを加えたエッセイ集。
自殺、死刑制度、脳科学、環境問題、宗教の功罪、ジェンダーなど、生命倫理の課題として論じられる問いに対し、「いい、悪い」の二分法ではなく、一人称の視点で第三の道を切り開く哲学者による思考の軌跡。

Iyokiyehaは、修士論文に取り組む頃から森岡の論には共感しており、生命学の視点を取り込もうと私なりにも思索してきたつもりである。
生命学から、自分を棚上げすることなく考え行動することを。
無痛文明論からは、それを暴こうとする自分自身が常に無痛化のリスクを負っていることを意識し、思索し生きぬくことを学んだ。
結婚し、子どもが産まれ、家族を守るという責任を負った今、現実に忙殺されてついこうした視点を忘れてしまいそうな毎日ではあるが、本著を読むことによって、以前の私にとっては「今より鋭い」世の中の見方(人には「とがっている」と言われるが・苦笑)を思い出すきっかけとなった。
以前を「取り戻す」のではなく、現在という地にしっかりと足をつけ、その上で「よりよい生き方」「心底納得できる生き方」を模索する姿勢を、新しく作り上げていきたい。

http://www.lifestudies.org/jp/
(Web:LifeStudies Org./JP)

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