2008年10月13日月曜日

夏来進『隠れた薬害? 精神分裂病』文芸社、2008年。

医師免許を持つ、精神分裂病(現在の「統合失調症」)患者による、精神病薬の副作用に関する仮説と、妄想の内容、そして精神病院や精神医療の実態を描いた書籍。
精神病薬の「薬害」について、服薬によりドーパミンレセプタをブロックする作用がある「ために」、その作用の結果としてドーパミンレセプタが増加することを説明している。
また、服薬している方の実感として、服薬しているときのだるさから、服薬を止めることによって開放され、爽快感を得ることができるという表現も印象的であった。
鵜呑みにできる論ではないが、そういう考え方や作用は、実際に起こりうることとして把握することは、相談者と被相談者の共通理解を広げる上で、有益だと思う。

斬新でした。
精神病薬の作用について、PSWのスクーリングでようやく理解できたところだったのですが、確かにレセプタをブロックしたら、人間のしくみ(ホメオスタシス)としては、新しいレセプタを作ることは想像に難くない。
だから、服薬し続けて「ちょうどよくなる」といえる。
薬の副作用でだるさがあるとすれば、だるさがある状態で「安定」する。
それを「薬害」とすれば、確かに言葉通りの意味としても解釈できる。
もちろん、ドーパミン仮説も、夏来氏の仮説も、仮説でしかないわけだが、双方は連続して起こることゆえ、どちらかが間違っているとは言い切れない。
職制から、服薬をやめさせるわけにはいかないのだけれども、このあたりの研究がどこまで進んでいるのかということは、機会があれば知ってそうな人に聞いてみることにしよう。

「紙幣」に関する妄想の記述。
迫力があり、かつ、「これ」としては論理的に正しいところがにくい。
ありえないけど。
あっても全然不思議でないと思わされてしまうあたりが、非常に迫力ありました。

「面白い」という表現が正しいのかどうかわかりませんが、一気に読ませる魅力のある本です。


おすすめ度:★★★★☆