2021年5月3日月曜日

信号機の誘導音制限 毎日新聞 210316

 毎日新聞 2021年3月16日 11面(オピニオン)

そこが聞きたい 信号機の誘導音制限 「共生」へ妥協点模索を

視覚障害者に信号の状態を知らせる音響式信号機のうち、8割が稼働時間を制限しています。現状から見える、障害のある人とない人の「共生社会」に向けた課題を取り上げています。
ゴールボールのメダリスト、浦田理恵氏へのインタビュー記事。

仕事帰りなど、音響式信号機が夜鳴っていない時間帯に不安がないといえばウソになるが、道路を渡る時には、足音や他の音を聞きながら渡るため、(浦田氏は)危険な目に遭ったことはない。
アスリートなりに音への意識が高いので、横断歩道を離れてしまうことはないが、そういう視覚障害者ばかりではない。音響式信号機が稼働していない場所で、横断歩道から大きく離れた体験をした視覚障害者もいる。
稼働時間制限の主な理由は、近隣住民からの苦情が多い。視覚障害者にとって音は必要な情報であるが、一方で現在の街中には音があふれているのも事実。お互いが歩み寄れる妥協点が必要。
海外で白杖を使っていると、知らない人でもどんどん声をかけてくれる。印象的だったのは、「骨折してリハビリ中」だった人が「遅いけど、一緒に行こうか?」と言ってくれたこと。
障害がある子どもとない子どもが一緒にいる空間が増えたら、互いの価値観が広がるように思う。

https://mainichi.jp/articles/20210316/ddp/005/070/002000c

音響式信号機を巡る立場の違いは、一律で埋められるものではないと思います。静寂を求めるいわゆる健聴者、音が道しるべとなっている盲者、どちらも広い意味で「人権」でありながら、その指し示す内容は異なるため、この時点で議論を続けたとしても平行線をたどるばかりだろう。
少なくとも、その設置を巡る議論においては、抽象度を一つあげて「目的」で考える必要は感じました。「音響式信号機の是非」ではなく「夜間眠りを妨げられないこと」と「横断歩道を安全に渡ることができること」という問いに読み替えて交点はないか、あるいは本質を外さず、他の問いに置き換えることはできないかどうか、この点での議論は必要だろう。

音響信号機に関するQ&A
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/annzen-shisetu/hyoushiki-shingouki/onkyou.html
(警視庁Web)