2021年5月4日火曜日

本田美和子、イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ『ユマニチュード入門』医学書院、2014年。

 「この本には常識しか書かれていません。しかし、常識を徹底させると革命になります。」

 「ユマニチュード」とは、認知症ケアに関して、クライアントを「人」として扱う、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケアについて、「人とは何か」「ケアをする人とは何か」を問う哲学とそれに基づく実践技術から成り立つ技法のことです。(4ページより)

 本書は、「ユマニチュード」について、核となる技術を紹介しながら、認知症患者さんとその人達にケアする人のことを考えていきます。技術といっても、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の動作に関することと、それらのケアを行うための準備や約束事に関すること、例えば「出会い」「ケア」「知覚」「再開」について、図を用いて簡潔に説明しています。

 核となることは、日本語で言う「人間」という言葉に含まれる、「人と人との感情を交えた関わり方」ということになります。技術一つ一つはそれほど難しいものではない「(上記)常識」であるにも関わらず、一貫してそれを行うためには「自分や周囲の環境」が邪魔するので、一連の技法としてはなかなか困難な内容になります。それでも、一つ一つ取り組んでいく必要がある、と思える技法です。

 確かに、ケアの現場でこうした技法が一般化すれば、虐待や不適切介護なんてのはなくなっていくような気がします。人としての安心感があれば患者(クライアント)は落ち着くことができるでしょうし、「問題のある人」を「生み出さない」ための技法であると思います。自分がいろんな人と接する時に役に立つ技法であると思ったのと同時に、何か折に触れて対人支援業務にあたる人に紹介したい一冊でした。