2022年6月19日日曜日

重松清『きみの友だち』新潮社(新潮文庫)、2008年。

  純粋に現代小説を読んでみたいと思った時に、Amazonで調べて買ってみた一冊。独特な語り口と、自分のまわりを含め「どこにでもあること」を淡々と浮き彫りにする小説。短編小説が重なって、一冊を通して一つの物語として結ばれる、簡潔明快でありながら自分の思い出にコツンと触れる、それでいてきれいなイメージのある言葉が綴られている。私はとても好きな小説だった。

 自分にとってはどうでもいいと思ってしまう周囲の人たちのやりとり。そこにいる私は、私であって私でないような感覚がある。そして、私以外の「みんな」には興味がなくなっていく。うっとおしくなって離れようとした時、その視線の先にいた一人の子、友だちでもなんでもないと思っていた子が、自分にとっては友だちになっていく過程と、その子が目の前にいなくても友だちでいるという感覚。「みんな」が「友だちだ」と言い合っていることへの違和感と自分にとっての友だちの意味。

 一人称と二人称とが織りなす日常の描写が、自分の思い出をなぜか想起させる小説でした。こういう静かな、それでいて自分の内側にコツンと触れてくる文章って、不思議だ。そして、素敵だ。