2019年2月11日月曜日

稲田将人『戦略参謀 ー経営プロフェッショナルの教科書ー』ダイヤモンド社、2013年。

・小説で「経営企画」のイメージができる。主に戦略に特化した内容で、小説をそのまま実践に当てはめられるものではないが、要点が「解説」としてまとめられており、この中には実践的な考え方が示されている。
・大切なことはPDCAの精度を高め、高速で回すこと。社員のやる気を引き出し、社会への貢献まで見据えること、人の業に振り回されないようにすること。自分を高めることが、まわりまわって社会へ貢献することになるという単純なメッセージが響く。
・学ぶことは多いが、単純に読み物としてもおもしろい。AudioBookもおすすめです(audiobook.jpで販売中)

(以下引用)
48ページ:それまで一人がやってきた仕事を二人以上の分業で行うために、仕事の責任範囲を明確にしなければいけないという必然性から作られるのが組織なのだ。
53ページ:(略)『考える』というのは、まず現状を的確に把握する。そして、その中での重要な意味合いを明確にする。(略)それを仮説として、次の商品を開発する。そして、その結果を見て、そのキーワードをさらに磨きあげる。あるいはさらに新しいキーワードを見出して商品化する。(略)仮説と検討(略)これを繰り返すのだ。これは本質的に学習という行為になり、企画の精度を高めることにつながる。
62ページ:「戦略は実践されて、はじめて価値がある」(略)実際に成否を分けたのは、①その戦略的な方向性に沿った実践力と、②素早く的確な方向修正能力の二つ(略)
66ページ:全ての施策の成功には、成功の前提があるので、市場が変われば当たる要因も当然ながら変わってきます。成功に向けた因果を踏まれていない打ち手は上手くいきません。
68ページ:規模はある程度大きくなってからの二度目以降の成長軌道入れ、個人の力だけでなく、組織の力を発揮させることが大前提になります。(略)
 どんなに分業を進めたとしても、最後の最後まで社長に残る役目があります。それは、リーダーシップの発揮という重要な役目です。
94ページ:この手の資料の書き方は、実は、ある程度の規模を超えた企業が正しくPDCAを回すために必要な技術のことなんだ。PDCAは状況に応じた修正行動をとるための基本動作でもあり、企業にとっての学習行動だ。PDCAを回せない会社は学習できない。つまり企業の能力が高まっていかないといっても過言ではない。
112ページ?:正しい問題解決のための思考ステップ
①現状把握:挑戦を行わなければいけない必然性がある。まず今どうなっているのかを明確にする。
②真因の追求:問題点の本質的なものを明確にする。
③解の方向性:真因が腹に落ちれば、決まってくるもの。
④具体策の比較検討:実行に当たり、具体策を比較検討し、どれが一番最適な方法か評価する。
⑤実行計画の明示:どういうスケジュールで進めるか。
135ページ他:「人、性善なれど、性怠惰なり」
240ページ:慈悲と怒り、この二つの要素が人を導いていく制度の中には必要ということだ。そして、そこにいる人間の欲望がエネルギーとしてベースにあるというわけだ。
254ページ:企業は、働く者がそこで力を高め、自身の力を発揮して事業に貢献し、そして企業が市場に貢献する。結果としてその存在自体が意義のある会社として発展していく。(略)市場も企業も、そしてそこで働く者も皆が幸せになれるからだ。
255ページ:世の中に足跡を残してきたのは、保身に走った人たちではなく、道を開こうとあがいた人たちだ。
366ページ:企業の活動を「市場や世の中で、その事業活動が生み出す価値によって貢献し、永続的な発展を目指す」と定義してみます。すると、企業における「悪」はその健全な活動を阻むもの、といえます。