2019年2月24日日曜日

働くことコラム06:希望する賃金はいくら?

Q「希望する給料はどのくらいですか?」
A「月給で20万円くらいほしいですね」

 前職では、不思議なくらいこのやりとりが多かったです。同業者あるいは「働くことを支える支援者」なら「そうそう!」って言ってくれそうですし、関連する仕事に就いている人も「あるある!」って言ってくれそうな気がします。
 「20万円」に根拠はあるのか?と調べてみると、東京都における初任給平均が、大卒で210,500円、高卒で172,300円でした。ちなみに私Iyokiyehaが育った静岡県では、大卒で199,300円、高卒で160,900円と地域差があります(厚生労働省)。もう一つ。給与総額の平均は、355,223円だそうです(いずれも月給)。なるほど、大卒者が「20万円!」って言うのは、好意的にはわからないでもないわけです。ただ、個人的には「よくわからない」というのが本音です。
 ちなみに前職で勤務したある施設の就職者の平均賃金は、自己申告ベースでもう少し低額でした。そもそもデータの信ぴょう性が微妙なので参考値でしかないのですが、上述した統計(最近信ぴょう性が揺らいでしまっていますが…)における平均値を上回ることはなかったようです。
 ただ「希望する給与(月収)」と「平均給与」は意味が違いますよね。例えばIyokiyehaさんは、現在39歳で妻と3人の子どもと暮らしていて、妻は週2日ほど仕事をしています。持ち家になった今転職を考えた場合と4年前賃貸に住んでいた頃に転職を試みた時とでは、希望する給与は異なるでしょう。友人で独身者のAさんや、所帯を持っていても子どもが一人ならまた異なる希望給与になるでしょう。家族状況だけじゃなくて、趣味の有無や、広く生活スタイルで、希望する給与額は大きく変わってくるでしょう。
 何が言いたいのかというと、「希望する給与」とはそれくらい個別性の高いものであるということです。その平均値をとることには、景気の推移を確認するなどの意味はあるのですが、個別の希望給与の参考になるかというと疑問があるわけです。
 それにも関わらず、再就職者の多くの割合の方が「月給20万円」というわけですよね。ここに何があるのか。ざっくりとした生活設計であってほしいです。好意的には。けれども、それ以外である可能性もあります。
 いろいろ考えられるのだけれども、就職活動においての要点は、やはり「自分にとって必要な額を希望給与として根拠をもって提示できるかどうか」です。自分の生活を知らない人(応募先、具体的にはその面接官)に対して、30秒くらいで「あぁなるほどね」と思ってもらえることと、求人票等で提示されている給与額と大きな差がないことが、採用する側の「納得感」になると思います。
 あたりまえのことですが、採用する側の理屈としては、
 1 求人票、求人情報は公開しています。
 2 応募してくるのなら、それらは確認しているよね?
 3 この条件でいいってことで、応募してきているよね?
 というのが「前提」です。ですから、面接練習なんかで「希望する条件はありますか?」という質問例があるのだけれども、これは人づての紹介で応募する場合や、求人が公開されていない場合、あるいはハイレベルな採用活動で「その人」に合わせた雇用条件を作っていく場合の質問であると考えるのが自然でしょう。「求人の給与は少し安いんだけど…希望で伝えてみます」ということを何度も聞きましたが、その「数万円の賃上げ交渉に、根拠はありますか?」
 この話題において、私はある人の一言が忘れられません。その方は、人生経験豊富であるにも関わらず誰にでも敬意をはらって接することができる人で、自分の置かれた状況を受け入れながら次の一歩を踏み出そうとしている方でした。
Q「条件はあまりよくないと思うのですけれども、生活は大丈夫ですか?」
A「これもご縁ですよ。ある分でやるしかないですよね。そういうものですよ。」
 うーん、納得するもしないもこれが本質だと、心底納得させられた一言でした。

 表層的な話題にしておきました。というのも、この話題、突き詰めれば「労働対価の算出」なんていう、経済学の本質に迫る内容になっていくので、あくまで一人の元職業カウンセラーの就職活動に対する向き合い方ということで。