2010年2月13日土曜日

佐藤真海『夢を跳ぶ パラリンピック・アスリートの挑戦』岩波書店(岩波ジュニア新書604)、2008年。

北京パラリンピック陸上競技・走り幅跳び日本代表選手による手記。
大学在学中の19歳の時に、骨肉腫を発症し、右下膝下を切断することとなった著者が、闘病生活を経てアスリートとして活躍するに至る様々な困難や、その時々の想いが綴られています。

Iyokiyehaは、今の仕事に就いてから、特に「障害」というものに接する機会が多くなりました。
職場定着に関する、一般的なノウハウに関しては、これまでにも学んできましたし、そもそも今の仕事はその専門家であるために、必要最低限のことは身に付いているつもりです。
今回、この本を手にしたきっかけは、会社の健保組合か何かの冊子の裏表紙に著者のインタビューが掲載されていたことなのですが、思うところもあり、読書にこうした障害当事者の手記を積極的に入れていこうと思った次第です。

特にその内容が仕事のスキルに直結するかどうかというのは別として、会社の内側からは「中堅」と、外側からは「専門家」として見られることを意識した時に、「当事者に寄り添う」ことが、仕事の質をよくする上でも大切なことなのではないかと考えるに至りました。
以前は「まだまだ知らないことがあるから勉強しなきゃ」と思ったわけですが、それも含めつつ、もっと大切なことは当事者間のブラックボックスを可能な限り開いて、お互いが可能な範囲で相手を気遣う場を作り出すことが私の仕事の本質的なスキルじゃないかと思ったわけです。

いわゆる「調整力」とでもいいますか。

「こういうハンデには、こう対応する」という一対一対応の考え方では限界があったり、対応に角がついてしまったり、何より当事者に「共感」してもらえるかどうか。
これを埋めるためのスキルが問われることになります。
そのスキルとは、専門的な知識をいくつ知っているかということではなく、当事者の悩みに寄り添い、引き出し、調整する、という、あたりまえのことをどのくらいの深さでできるかということになってくるのではないかと考えます。

「障害がある」ことは、一体どういう思いが伴うのか。自分に対して、どう思うのか。
そんなことを考え、想いを馳せる一冊になりました。
私なりに、学び続けていこうと思います。