2008年12月21日日曜日

「前進」に関する一考察

合気道の師匠から教えられていたことで、どうにも不可解だったことの一つに対し、ひょんなことから気づきがあったのでメモ。
「前進」する際の、足の運びと身体の連動に関すること。
ちなみに「ひょんなこと」=「娘を抱いてあやしていた」である。

歩行や走行動作の際に、後ろ足を蹴って前進する方法では、後ろ足の蹴る力によって前進する力が生成される。
この場合、最も強い前進する力は、後ろ足で蹴った力が運動エネルギーへと変換され、身体動作速度が最大になった時に生まれる。
この力は、後ろ足を「蹴る力」によって生成されるため、力の大きさは足の筋力次第ということになる(部位に関する勉強は未実施)。

これまで、何となく「感じ」や「予感」はあっても、不可解だった合気道の理合(りあい)の一つは「後ろ足で蹴らずに前進する」ということ。
もちろん、全く蹴らないことはほとんど不可能であるとは思われるが、蹴る力ではない別の力を利用して、身体を前進させるという理合である。

娘を抱いて、揺らしてあやしている時に、ふと「つつっっ」と身体が前進した。
いつもと違う感覚に気づき、動作を何度か復習してみる。
ちなみに、娘はその感覚が快刺激なのか、ニヤニヤと笑っている。

理合を言語化すると、以下のように表現される。
つまり、体重のもつ「位置エネルギー」(重力に従い、真下に働く力)を、身体動作を調整することによって、身体全体を前進させる力として開放することである。
直立すると、体重の分だけ位置エネルギーは存在しているものの、直立する足の筋力と均衡がとれるため、エネルギーは解放されず留まったままである。これが「気をつけ」の姿勢。
通常の歩行・走行動作は、この真下に働いている位置エネルギーに対して斜め上気味に地面を「蹴る」ことによって、身体を前進させる。
一方、合気道的な動作では、腰と足の位置を「調整」することによって、位置エネルギーの「落ちる位置」を調整し前に押し出すことにより、結果として身体が前進する。
感覚としては、身体の中で「前に動こうとするエネルギーを溜め」つつ、膝の関節を調整し足を前にスライド「し始める」のに合わせて、腰が前進し、身体がそれについていく感じである。
位置エネルギーによって生成された前進エネルギーが、一旦身体内に溜まり、引き絞った弓が元に戻るときのように力が開放される。
この力が人に伝わると、伝えられた方は一瞬にしてものすごい力がのしかかってくるような感覚に襲われる。
師匠に正面当てをかけられたときに、ふっとんでしまう時のような感じなのだろう。

感覚を掴むためのとっかかりができたので、また動作によって意識化していこうと思う。

ちなみに、宮本武蔵が言ったこととして、師匠から「剣は身体動作についてくる」といったことを紹介されたが、そのことに関する思索もまた、深めたいと思う。
最近、袈裟斬りの動作が安定してきて、肩や肘のつかえもとれてきたことと、関係があるかもしれない。



(仮説-左:通常の歩行・走行動作、右:合気道の理合による前進動作)